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伝統と最先端の文化が息づく街〜韓国ソウル市修学旅行視察会から

 

戦争記念館には多くの映像装置があり、日本語でも対応している

 

 昨年12月19日に、大統領選挙が行われ、ハンナラ党の李明博氏が第17代大統領に決定した韓国。首都ソウルは、近年めざましい発展を遂げており、最先端の文化が生まれている。その一方で、伝統的な建築物や文化も息づいている。飛行機で東京からは約2時間30分、福岡からは約1時間30分と、修学旅行先としての検討も十分に可能だ。そこで九州、大阪地区の高校教員ら約10名が、12月24日から4日間、ソウル市を視察。その様子を追い、ソウル市内への修学旅行ポイントを探った。


体験学習の場として

貞洞劇場では伝統衣装の試着も好評

 今回の主な訪問先は、「戦争記念館」「Nソウルタワー」「韓国の家」「徳寿宮(トクスグン)」「貞洞(チョンドン)劇場」「NANTA」「ソウル英語村」「ロッテワールドアドベンチャー」「誠庵国際貿易高等学校」「清渓川(チョンゲチョン)文化館(清渓川ルチェビスタ見学も含む)」「仁寺洞(インサドン)」の11カ所。

日本語でも学べる韓国と戦争の関係

 参加者が特に興味を示していたのは、最初の訪問地「戦争記念館」。同館は韓国が関わった戦争の歴史や軍事遺物、英雄の紹介などが並ぶ。韓国では戦争の被害を受けていない世代への教育としても利用されており、学校単位の利用も多い。

  この日は韓国戦争(朝鮮戦争)に関する展示を見学。劣勢の韓国軍が形勢を逆転させた「仁川上陸作戦」や、韓国と北朝鮮の軍事境界線「板門店」のジオラマの前では、多くの質問があがった。各所に置かれた映像は、ボタンで日本語を選択することもでき、言葉の壁は感じられない。

同時に200人で韓国文化を体験

 体験学習の場としてふさわしい「韓国の家」では、キムチ作り、韓国舞踊、礼儀作法・茶道、テッキョン(伝統武道)、サムルノリ(四物遊び)、韓紙工芸作り、伝統楽器(短蕭)、韓国伝統のお面作り、伝統結びなどを、同時に約200人が体験できる。

  キムチ作りは最大120人が体験でき、韓国舞踊ではきれいな衣装も着用できるため、女子生徒から人気がある。「勉学によいとされるお面作りを体験した生徒から、大学合格後に感謝の手紙が届きました」と、マーケティングディレクターの李榮男さんは修学旅行生徒との交流を喜んでいた。

伝統公演の演出と国を越えた新舞台

 見比べる価値があるのは「貞洞劇場」の伝統公演と、伝統に新しいパフォーマンスを取り入れた「NANTA」の公演。「貞洞劇場」では、伝統衣装の試着体験や、ステージで楽器の体験教室も行われるほか、舞踊・器楽・風物・歌など韓国伝統芸術のハイライトが演じられる。フィナーレは、出演者も観客も一体となり外の広場で踊るのだが、この演出には参加者も興奮の様子だった。

  一方の「NANTA」(乱打)は、伝統的なサムルノリのリズムを基盤に、音と動きだけで構成された非言語劇。キッチンを舞台に、コックたちとマネージャーの関係がユーモラスに演じられ、皿や野菜が飛び交うなか、時には観客も舞台に上がり笑いを作り上げる。台詞がないので、国籍や年齢を越えて楽しめる。

学校間交流と環境教育

 
教員らも「楽しかった」と声をそろえる
NANTAは、伝統芸能を現代風にした

日本への高い関心交流環境を整えて

 海外への修学旅行の際、生徒たちに体験させてあげたいものの一つには、現地の学校との交流があげられる。今回は欧米貿易・中国貿易科があり、来年度から日本貿易科が新設される「誠庵国際貿易高等学校」を訪れた。生徒たちは日本への関心が高く、教室に入ると「こんにちは」と明るい笑顔で迎えてくれ、その姿に思わず普段の「先生」の顔になる姿が印象的だった。

  また、パソコンが完備された職員室や、椅子が設置され映像を見ながら授業を行える広い講堂など、設備面の良さには目を見張るものがあった。同校では、3年前から三重県の高校と交流を続けており、日本貿易科の新設に伴い、さらに日本の高校との交流を行う環境を整えていきたいと考えている。

環境都市を目指し憩いの場を復元

 新たな訪問地として注目したいのは「清渓川文化館」だ。同館は、2005年に新たに復元された清渓川の歴史や復元過程、復元工事で変化した都市環境とビジョンなどが映像やジオラマと共に紹介されている。

  水の汚染やそれに伴う伝染病などにより、蓋をされ道路となっていた清渓川だったが、腐食・損傷が生じ、川の復元を決定した。復元後は、自然環境も回復し、昨年7月には470種の生物が確認されたほか、周辺の気温も下がったという。現在は、環境都市を目指すソウルの象徴として市民の憩いの場として利用されている。

  文化・歴史・教育を学ぶ資源が豊富なソウル市。参加した教員らも、過去、現在を学びながら、改めて日本の文化・歴史・教育を考え、修学旅行地の一つとして検討し得るきっかけとなったことだろう。

参加者の声 修学旅行メニュー 開発は豊富

 
日本人教員に興味津々の生徒ら

 すでに海外への修学旅行は行っているが、新たな候補地の模索のため訪れた熊本県立東稜高等学校の永野利徳教頭に話を聞いた。
  「英語村と高校への訪問では、生徒たちが大変活発だったことが印象的です。戦争記念館は、韓国戦争時代しか見ていませんが、わかりやすい説明で見るに値すると感じました。全体的に修学旅行のメニュー開発に力を入れていると感じることが多かったです。全体的な費用の面がもう少しわかるようになれば、先生方も考えやすいと思います」。