わたしの食と健康D
 

   和食への強いこだわり

             落語家 林家木久蔵さん

 落語のおもしろさを子どもに教える「木久蔵の子ども落語」は、テレビ「笑点」でおなじみ、落語家林家木久蔵さんの著書だ。画才、文才、俳句の才能に加え、“日本ラーメン党”や“木久蔵せんべい”など、ユニークなアイデアでも知られるが、多芸多才だから忙しい。テレビ、ラジオ、独演会、講演と全国各地を飛び回っている。そこで気になるのが食養生。健康の基本を訊いてみた。

 江戸っ子師匠の食のルーツはおふくろの味。子どもの頃は毎朝、大根と昆布の煮える匂いで目が覚めたという。だから、日本の典型的な朝食、和食の献立にこだわる。小田原のアジの干物や、長野の野沢菜、全国のファンから送られた新鮮素材を中心に、アサリや豆腐の味噌汁、塩鮭、じゃこ、ひじきや野菜の煮物、ゴマ塩など。海苔と干物は毎朝欠かさない。シンプルだが原点を大切にした味だ。こういった朝食なら、身も心も軽くなって、調子がいいというから、いわば、日本の味の実践派、経験からの知恵である。

 ふだんは徹底的和食党、だから、洋食は誕生日など年に数回。肉は食べずに大豆たんぱくを、豆腐や油揚げ、納豆、煮豆からたっぷり摂る。新陳代謝が活発になって、高座に上がっても頭の回転が早くなる。それに、海苔など海草類ビタミン、ミネラル、食物繊維の補給源。日本の典型的な食習慣がたまたま、ヘルシーだったというわけだ。
 落語には食べ物の話がたくさん出てくるが、噺の中の“まんじゅう”“もち”“たくわん”などには、今のように、添加剤や保存料などは使ってなかった。また、やたらと加工もしていない。ヘルシーそのもの、自然なままの食べ物。ところが師匠の苦手な食べ物はその自然な“さつまいも”と“じゃがいも”だった。おやつに“やきいも”なんていうのは、糖分や脂肪の心配がない。毎日食べればビタミンCやEが豊富で、おすすめ健康食品。若さと健康の助っ人なのだ。しかし、食糧難時代に食べさせられた、まずいさつまいもの味は、どんなに健康にプラスでもやっぱりだめだ。そのかわりに、大豆製品、ゴマ、野菜類をしっかり食べて補っている。

 少年時代は、今では考えられないほど、ひ弱だったそうだ。それが、身体を鍛えるために、剣道に励んだせいかすっかり丈夫になった。最近も、朝食後に木刀で素振りを百回位することがあるが。お腹のこなれ具合が良く、仕事がスムーズにはかどるということだ。
 絵も食事も昔の日本にこだわりたいという師匠。たまのリラックスタイムは、近所のすしやでの憩い酒。新鮮ネタの肴も健康だからこそさらにおいしい。

(99年5月15日号)