わたしの食と健康C
家庭では京野菜と干物を
映画美術 内藤 昭さん
99年度日本アカデミー賞・優秀美術賞・を映画「プライド」の美術で受賞した内藤昭さんは、京都市の出身。溝口健二、衣笠貞之助、三隅研次、吉村公三郎、山本薩夫、森一生、田中徳三など実力派監督らとともに、映画づくりひとすじに歩いた今日だ。現在はフリーで活躍。「泥の河」「華の乱」「橋のない川」ほか百本以上の映画美術を担当。そのグレードの高い美術は、毎日映画美術賞ほか数多く受賞している。
そこで仕事柄、地方に滞在する機会も多々ある。一昨年の金熊賞受賞作「絵の中の僕の村」の時には、一ケ月以上を真夏の高知で暮らした。そんな時の健康対策は、まず・煮魚・や・おひたし・のある・めし処・を探し出すこと。肉類大好き人間だけに、栄養のとり過ぎやバランスの偏りを心配するわけだ。普段からコレステロール値が高く、医師から投薬されている位だが、しかし、炎天下で仕事をするには、エネルギーも必要。コレステロールばかりを気にしてはいられない。ついつい、朝食には家で禁止されている卵を、半熟卵にして食べたり、ベーコンまでもオーダーしてしまうということだ。ところが毎日が外食なので油っ気がらみ。それに、土地の珍しい食物にも魅かれて、どうしてもカロリーオーバー。内緒のつもりでも、コレステロール値が秘密露見という結果になる。
そんな偏食のツケは、帰宅してからの野菜と干物がカバーする。家の周りが京野菜畑なので、採れ採れ野菜がたっぷり。不養生のリフレッシュにはもってこいという。ところが、仕事のない時が悩み。生活のリズムが変調になるのと、運動不足が泣きどころ。改善の必要を痛感中という。
何しろ、育ち盛りが太平洋戦争の最中だったから、うまい、まずいより満腹感が第一だった。兵学校入学時に、お母さまから・何でも食べたいものを・と言われて・大豆の豆御飯を腹いっぱい・と言った思い出がある。今だに、芋類と豆類が大好き。ビタミンCも繊維質も足りているわけ。食べ方が猫より上手いと言われる魚も好物。焼魚は中骨までも食べつくす。だから、カルシウム不足なんぞは何のそのということだ。
戦前生まれなので食べ物には貪欲。出されたものは残さない習性がある。が、年とともに量の限界を知った昨今。・どうせ食うならうまいもの・がモットーになった。若い頃は食べずに飲んでいたアルコールも、今はできるだけ食べてから飲むように心がける。洋酒一辺倒。和食より洋食を好む。晩酌の習性はない。しかし、飲む時は洋の東西を問わず、珍味と映画論議が欠かせないこだわり酒だ。
(教育家庭新聞99年4月17日号)
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