私の食と健康第13回

取材先で教わった健康食に凝り
映画監督 原 一男さん

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 初めての劇映画、「またの日の・知華(疾走プロダクション製作)」撮影準備中の原一男監督は、衝撃的話題作「ゆきゆきて、神軍」「さようならCP」「極私的エロス・恋歌1974」など、ドキュメンタリー映画を監督し、「全身小説家」では、毎日映画コンクール日本映画大賞、キネマ旬報ベストテン1位、同映画監督賞、日本アカデミー賞特別賞ほか、数々の賞を受賞。目下、現代劇と取り組んで、時間に追われる生活である。

 そこで、健康を維持する食生活の秘訣はというと、いたって普通の和食。味噌汁と冷やっこ、鯵の干物が一番という。山口県の宇部市、沖の山炭鉱の出身。子ども時代は虚弱児だった。20歳の時に上京したが、見送りの母が、東京へ出てもすぐに戻って来るのでは、と心配された程だ。だが、何故か丈夫になって、病気ひとつしなくなった。当時はひどく痩せていたのが、お腹が空いて、大盛りどころか大々盛り。食べ物の好き嫌いをしないで、パクパク食べているうちに、肥ってしまった。結婚して3食きちんと食べるようになってまたも肥満。

 「これはいけない」と自覚したのが30代中頃。「ゆきゆきて、神軍」を撮っている時だった。少し小高い場所から俯瞰を撮ろうとしたが、息切れがして撮ることができない。それからは、ほどほどに食べて、神宮外苑の周りをテクテク歩いたり、ハイキングやジョギングをするようになった。しかし、一生懸命が過ぎたのか、足を痛めてストップ。今度は玄米食を始めたが、外食がちなので、効果はなかった。その後も、健康食に凝ったりしたが失敗ばかり。最近は練り黒ゴマと蜂蜜、きな粉を加えて、ペースト状にしたもの。取材先でおじいさんから教えられた健康食だ。これが美味しい。そこで、朝食はパン。ロケ中のアンバランスになりがちな栄養の助っ人である。

 お酒は楽しく飲みたい。普段はビールを毎日、大瓶一本。明日へのエネルギーだから、ダラダラと飲まないで、適当に寝てしまう。いい酒である。
(教育家庭新聞2000年3月11日号)