先生のための環境教育講座  

第54回 イギリスの中核教科「サイエンス」と環境教育
                    
東京学芸大学名誉教授 佐島群巳

〇サイエンス(Science)の基礎・基本

 イギリスにおける教科構成の中核教科は、国語、数学、サイエンスの三つである。この中でサイエンスは、環境教育と深くかかわっている。ここでは、サイエンスにおける環境教育の基礎・基本を明らかにしていきたい。
 表1にあるように、サイエンスを構成する学習内容は、日常的な事象から宇宙的グローバルなものへと発展しているのである。
 特にキーステージ4はシングル・サイエンスとダブル・サイエンス二つの内容がある。シングル・サイエンスは、短時間で必要最低限の内容が学習できるように、より制限された学習過程になっており、一週間の時間割中で、12・5%を占める。これに対してダブル・サイエンスは、一週間の時間割の中20%を要し、内容もシングル・サイエンスより深く学習できるようになっている。

〇サイエンスにおける各ステージにおける「環境教育」

 ナショナル・カリキュラムにおけるサイエンスは、環境教育と密接な関係をなしている。
 サイエンスにおける環境教育にかかわる「トピック(典型教材)」には、次のようなものがある。
 ・環境の中の生物
 ・電気と磁石
 ・地球と宇宙
 ・エネルギー資源とエネルギー移動
 ・放射能
etc
 この中で最も環境教育とかかわる「環境の中の生物」内容の基礎・基本を表2に示してみたい。

〇サイエンスにおける環境教育と他クロス・カリキュラムとの関連性

 サイエンスには、科学的情報の獲得から始まり、自らの行動を評価したり、様々な行動から生じる影響を予測したり、科学的な能力を求めたりしている。中核教育「サイエンス」学習内容の最終段階としてキーステージ(15〜16歳−10〜11学年)にあげられた内容には、クロス・カリキュラムとの関連性が顕著に見られる。表3にそのいくつかを例示した。


 サイエンスで獲得されたスキル(技能)は、今日的課題である産業問題、社会問題、環境問題などに対処し、自ら行動するために一市民として必要不可欠なものである。各クロス・カリキュラムのテーマをこの市民教育につなげて考えられていることも明らかである。このことは、他クロス・カリキュラムのテーマを最終的に市民教育につなげ、知識だけでなく、今日必要とされる人間の態度・行動をもった主体的・創造的な環境形成者の育成を目指しているものといえる。
(参考)鷹野由希子「イギリスの環境教育(その3)National Curriculum・Science・におけるクロス・カリキュラム− 人間社会研究科紀要、第五号1999P119〜134」
(注)次回から「総合的な学習」を中心に取り上げたい。

(教育家庭新聞99年3月13日号)