先生のための環境教育講座
桐陰横浜大学講師 佐島群巳
第49回 総合的学習のなかでの環境教育
1.いま なぜ総合的学習か
中央教育審議会、教育課程審議会答申では、子どもの「生きる力」を育成するという視点と「社会的要請の強い」学習という視点から「国際理解教育」「情報教育」「環境教育」「福祉教育」「健康教育」の5つをテーマにした教科等『横断的、総合的な学習の時間』(以下「総合的時間」という)を設けることになった。
「生きる力」について、中教審は次の3つを上げている。
1問いをもち、自ら考え、判断して問題を解決する力
2他人と強調し、思いやる心、感動する心
3健康でたくましく生きる力
また、子どもたちに国際化、情報化、地球化、少子高齢化など社会に生きる力を育むためには、各教科等の関連を図った指導を行うことであると指摘している。 環境教育の対象となるものは、自然や社会・文化環境である。しかも、環境教育は各教科の中で環境にかかわる内容を取り上げられ、実践されている。
例えば水の学習について見るならば、社会科では「飲み水」「水源涵養林」、理科では「川のはたらき」「水溶液」体育では「良い水・悪い水」などが教科に分散されて扱われている。 これらの内容を『わたしたちの生命をはぐくむ水』というテーマで、教科横断的・総合的な学習を可能にする教材構成にすれば、無駄な重複が避けられ、教育内容の構造化、スリム化を図ることができるのである。
完全学校5日制になれば、従来の教育内容は各教科2〜3時間削減される。新しい教育課程は、教科学習による認識の系統性が図られる一方、総合的学習においては学力(見方、考え方、行い方)の総合化、知の総合化が期待できるのである。
2.総合的学習のねらい
教課審答申では、総合的学習のねらいとして、次の4つを上げている。
1自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を高めること
2情報の集め方、調べ方、まとめ方、報告や発表の仕事などの学び方やものの考え方を身に付けること
3問題の解決や探求活動に主体的・創造的に取り組む態度を育成すること
4自分の生き方について自覚を深めること
1〜4は、新しい学力像としての「知の総合化」された学力である。このような学力を育成することが、総合的学習に求められている。この学力は同時に社会の変化に生きていく働く力でもある。
3.総合的学習の活動の柔軟性
総合的学習は、子どもの創造的・主体的学習において成立するとともに、地域や学校の実態に応じ、各学校の創意・工夫を活かした学習活動例を上げておきたい。
〇自然体験学習
〇ボランティアなどの社会体験学習
〇観察・実験・調査学習
〇問題解決的な学習
このほか総合的学習が弾力的・創造的に展開できるように学習形態を多様化していく必要がある。例えば、次のようなものである。
〇グループ学習=異年齢集団による学習
〇外部の人材の協力(地域の教育力の活用)
〇異なる教科の教師の協力
4.総合的学習としての環境教育のとらえ方
(1)目標のとらえかた
環境教育では、子どもの環境に対する感性(関心、知的好奇心、探求心)を磨き、環境に対する人間の果たした責任と役割を認識させるとともに、環境保全への積極的参加と環境問題の解決力の実践力を育成するのである。
さらに環境への感性、認識、問題解決力・実践力を身につけることを通して、一人ひとりに環境マインドを育成させたいのである。
環境マインドとは「環境に対する心くばり」「環境に対する心構え」「環境のいたみを分かち合う」「環境を絶対こわさない」ということである。
(2)環境教育の内容をとらえる視点
1共生 自然と人間の総互補完
2系 生態系、生命維持システム
3均衡 生成の速さと処理の速さのズレ
4有限性 再生できない資源がある
5保全 アセスメントによる安全性の保障
6多様性 生物のすみ分け、適応の生活態
7価値、倫理、生きものの生存権
これらの視点は、教材分析、重点化を図るときの視点でもある。
(教育家庭新聞98年9月12日)