子どもの心とからだの健康
頭皮を守れば髪は健康で美しく 「朝シャン」という言葉がはやった時期がありました。今では「茶髪」「銀髪」の呼び方が珍しくない時代です。若者たちにとって、髪は特に気になる存在なのでしょう。今回は髪と頭皮の現状、その手入れ法について、元日赤医療センター皮膚科副部長で、目黒区にある実川皮フ科クリニック院長の実川久美子さんにお話を伺いました。 |
【頭皮のトラブル】 −−近頃の皮膚科での頭皮のトラブルはどんなことでしょう? 20歳前半の男性が脱毛したり、若い女性が地肌が透けてみえてきたという訴えなどがあります。男性の場合は遺伝によることが多いのですが、女性の場合は激しいダイエットによるものや、感染症などの病後に毛が抜けることがあります。 −−激しいダイエットは髪にも影響するのですか? 激しいダイエットをすると生理が止まったり、ホルモン異常をきたしますが、頭皮はホルモンの影響を強く受ける部分なのです。また、髪の毛の成分の99パーセントは蛋白質なので、美しい髪を保つには蛋白質を摂取することが必要です。これらのことから、激しいダイエットは髪を非常に傷めます。 −−他に髪にとってよくないことは? 薬品を使ったうえ、髪を強くひっぱるストレートパーマは、髪と頭皮を酷使します。また、頭皮は弱酸性なのですが、パーマ液やヘアダイ(脱色と染色)、ブリーチ(脱色)などはアルカリ成分の強い薬品を使うので、パーマやヘアダイ後は弱酸性の状態に戻すようなケアが大切です。 −−では、健康的な美しい髪を保つためには? 頭皮は畑のようなもので、髪の毛を野菜と考えてください。畑がよくないといい野菜がはえてこないのです。ですから美しい髪を保つには頭皮の状態を良くすることが最も大切。頭皮の表面は皮脂と汗とが混ざりあった弱酸性の状態で、バリアーの機能を発揮する一方、皮脂とフケが混ざり合うと毛穴が詰まってしまいます。頭皮を洗うことで毛穴の詰まりを防ぎ、血行を良くすることで毛根に栄養をゆきわたらせることが大切です。 −−コマーシャルではさかんに「キューティクルを守る大切さ」を強調していますが、キューティクルとは何ですか? 髪の毛は大きく3つの層になっていて、いちばん外側の皮をキューティクル(毛小皮)といい、中にある毛皮質、毛髄質を守っています。キューティクルはウロコ状で普段は閉じており、内部に含まれる水分や蛋白質が流れないようにしています。 −−では、「キューティクルが傷む」とはどんなことですか? キューティクルは摩擦に弱いという特徴があって、強いブラッシングなどでもすぐにはがれます。すると髪の内部から蛋白質や水分が流れ出して、はがれた部分から枝分かれします。これが枝毛です。はがれたキューティクルは元に戻らないので、髪がぱさつき、蛋白質がなくなるので潤いや張りがなくなります。 −−一時、朝シャンが流行語の時期がありました。 頭皮をきれいにすることは大切です。大気汚染が進んでいますから、汚染粒子と皮脂が毛穴に詰まって血行が悪くなり、抜け毛の原因となります。 −−どのくらいの頻度で洗うといいのでしょう。 洗わずに3〜4日経つとフケがでますから、週に2〜3回は必要です。皮脂の分泌が多く髪がべとつきやすい人は、毎日あるいは1日おきに洗髪するのが適当です。 |
【洗髪の注意点】 −−洗髪するときの注意点は? まず、自分の髪質を知ることです。細くてコシのない髪なのか、太くてバリバリの髪なのかによって、シャンプーもリンスも違ってきます。皮脂の分泌の多い人とそうでない人も違います。商品がたくさん出回っていますから、使ってみて気持ちよいと思うものを探すといいでしょう。 −−シャンプーをするとき気をつけることは? シャンプーは髪を洗うというよりは、地肌(頭皮)を洗うものです。最近は香りを髪に残したいという人がいますが、界面活性剤をたくさん含んだシャンプー剤を地肌に残すことでトラブルが起きることも多いですから、しっかり洗い流してください。 −−リンスの使用で注意することは? リンスは髪の表面をコーティングして傷まないようにするものです。リンスをつけてしばらく時間を置く人がいますが、長くつけていたから効果があるというものではありません。なぜなら、シャンプー後の髪は陰性の、リンスは陽性の電気を帯びており、瞬間的にプラスとマイナスが結びつくことで髪をコーティングするからです。リンスは地肌ではなく髪の毛につけるものですが、すぐ洗い流して、髪にも地肌にも残さないようにしましょう。 −−リンスとコンディショナーとの違いは? コンディショナーの場合はアミノ酸などの栄養分を含んでおり、傷んだ髪に補給する目的がありますから、しばらくおいて浸透させるようにしてもいいでしょう。でも、最後は洗い流します。 |
【洗ったあとは?】 −−髪を乾かすときにはどのように? まず、柔らかいタオルで包み込むように水分をとります。ゴシゴシこすってはキューティクルを傷めます。後は自然乾燥がいいのです。 −−ドライヤーで乾かすことも多いですが? 髪から10センチくらいの距離からドライヤーをあてる人がいますが、高熱によってキューティクルを傷めます。できるだけ遠くから、せめて20センチは離してかけるようにします。 −−ブラッシングについては? ブラッシングには地肌の皮脂を毛先までもってゆくという目的があり、地肌の血行を良くする働きがあります。毛の流れに沿って無理なくとかしてください。ただ、濡れた髪はキューティクルが開いているので、濡れたままのブラッシングは髪を傷めます。ブラシは柔らかいブタ毛がよいようです。プラスティック製のものは、静電気を防止する加工がされているものがいいでしょう。先が丸いものを選ぶと地肌を傷つけません。頭皮に炎症がある場合は、ブラッシングは避けた方がよいでしょう。 (教育家庭新聞2000年4月15日号) |