子どもの心とからだの健康
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−−−お風呂が身体に良いといわれる理由は? 矢崎・身体を温めることによって、皮膚の血行をよくし、新陳代謝を活発にすることです。日本人は40〜42度の熱いお湯に入りますが、ヨーロッパ人は35〜37度でぬるいお湯です。日本はヨーロッパに比べ暖かなせいか、冷たい温度に弱いのです。また、日本では風呂場が北側の最も寒い所にあったり、浴室を温める習慣がないため、42度位の湯でないと温まらないのです。 −−−熱いお風呂を好きな人が多いようですが。 矢崎・ 人は非常に熱いと、痛みを感じる受容体が反応して「痛い」と感じます。ところが脳の中に麻薬のような働きをするベーターエンドルフィンという物質が出てきて、痛みを麻痺させてしまいます。痛みが快感になるのです。この快感のため、熱さの中毒症状になって、「風呂をもっと熱く」ということになります。 −−−世界でみると42度は熱い湯だそうですが、身体への影響は? 矢崎・ まず、血液が固まりやすくなります。もともと血液は固まりやすいのですが、それを溶かす働きである繊維素溶解能が、高温のお風呂に入ると低下し、血液が固まります。すると夜中に脳卒中や脳血栓、心臓発作をおこしやすくなります。また、非常に熱いお風呂は免疫の機能が一時的に低下しますから、菌が呼吸器に入った時、風邪をひきやすくなります。その上、熱すぎるお風呂は出てからも発汗して体温が下がるので、肌着が濡れて冷たくなり、湯ざめしやすいです。 −−−ぬるいお湯は安全なのですか? また、どういう時に入るのでしょう。 矢崎・ 熱いとも冷たいとも感じない温度を不感温といいますが(日本では37度位、ヨーロッパでは34度位)、そのくらいの温度で20分位入ると、副交感神経の働きが高まり、身体が寝る準備を整えてくれるので、寝付きがよくなったり、朝早く目が覚めるお年寄りには効果があります。 −−−では、熱い湯に入った方が良い時は? 矢崎・ 今お話したような一番安全なぬるいお風呂を続けていると、身体が弱まると思うので、時には刺激の強い熱いお風呂に入ることも必要でしょう。熱いお風呂はぬるい湯と逆で、交感神経を刺激して身体を活発にするので、元気な人には効果的です。熱い湯の中毒症状になるといけないのですが。 −−−入浴全般の注意点をお話しください。 矢崎・ 自分の身体の状態に対して敏感になるのが、健康を守る上で大切なことです。その日の身体の調子をよく知った上で、湯温を選びましょう。 自分が気持ちよい湯の温度を知るために、湯温計があると便利です。 体調の悪いときは、少し穏やかな湯温にします。 また、寒さは高血圧の発作を招きますから、浴室と脱衣室の両方を温めることが大切です。 |
−−−半身浴の効能は? 矢崎・ ヨーロッパはお風呂に肩までは入らない文化で、半身浴です。日本では冬場は風呂場が寒いのでシャワーで湯気をいっぱいにして、室温を25〜27度にすると、半身浴でも寒くありません。湯温は38度位がよいのですが、寒いときは少し上げてください。全身浴は心臓に負担がかかりますが、半身浴は負担が少ないので、血圧の高い人や心臓が弱い人に向いています。 −−−温冷交代足浴とは? 矢崎・足がむくんだり腫れているときや、打撲、捻挫のときなどにします。 一般に腫れているものは冷やさないといけないので、バケツに水を入れ、足をつけます。あまり冷やしすぎると治癒力が下がるので、ときどき温かいシャワーを短時間かけて、また冷やします。これを交互にします。 −−−シャワーだけのこともありますが。 矢崎・ シャワーはブツブツ身体に当たって、物理的刺激を与えます。最近はシャワーの穴の作りもいろいろあり、感じ方が違いますから、マッサージ効果があります。 朝、熱いシャワーを浴びると身体が目を覚ましますから、スポーツ選手などが、身体のリズムを整えるときに使えます。 |
−−−一番風呂が身体に悪いと言われるのは? 矢崎・ 新湯(さら湯)が身体にきついということもありますが、昔は冬場は特に浴室が寒く、風呂も全自動ではなかったので、上の湯は熱くても下は水だということがありました。身体にとって適温ではなかったということです。 −−−風邪のときは入浴してもいいのですか? 矢崎・ 身体が熱をもっていたら腫れ物と同様に、温めてはいけません。一般的には熱がないときにぬるめで負担にならないように入浴します。 風邪といっても種類がありますし、症状も違いますから、医者に尋ねることが必要です。 −−−入浴剤に使われる成分はどんなものですか? 矢崎・ 入浴剤の業者は成分を研究していますが、血行を良くするもの、熱がうまく逃げるものなど、湯上がりがさっぱりするものを入れています。炭酸ガス、重曹、硫酸ナトリウムなどです。 泡が出る炭酸ガスは皮膚から吸収されて毛細血管を広げ、血流がよくなるので、ぬるい湯でも何倍も温まります。塩は食塩泉が「熱泉」といわれる通り、身体を温めます。 重曹は弱アルカリ性で、皮膚の表面の角質を溶かし、肌をつややかにします。このため、重曹泉は「美人の湯」といわれます。しかし角質は皮膚を守る働きがあるので、濃すぎると皮膚が痛みます。 −−−家庭でも入れられる天然の入浴剤は? 矢崎・ 柑橘類は、その油の成分で肌がつやつやしますし、香りが精神的な気持ちよさにつながり、リフレッシュ効果があります。リンゴやミカン、レモン、バラの花などもよいでしょう。 (教育家庭新聞2000年2月12日号) |