環境に取り組む企業F
牛乳パックのリサイクル機器を開発中
明治乳業(株)
1991年から生活環境室を設立し、牛乳パックのリサイクル活動を中心に環境対策に取り組んでいる明治乳業(株)。「環境に対してそれほど進んでいるという実感はありませんが、今は一企業として、一生懸命走り回っている段階です」と語る同室長の北原瓊輔さん。
食品産業は、他の産業と比べて生産物そのものはもちろん副生物も公害の原因になるということは少なく、基本的に環境や公害問題はないに近いという認識が以前は強かったという。1980年代後半から各業界で環境対策室などがこぞって設立され、その中で同社も食品業界としては比較的早い段階で環境に取り組むようになっていった。まずは全国にある32のすべての工場を点検し、環境に対して適切に対応されているのかを調べてまわった。そして昨年末ISO14001を群馬工場と軽井沢工場が取得するまでに至っている。
学校を訪れ子どもに啓発活動も
同社のメイン商品である牛乳から環境ということを考えた場合、残乳による水質汚濁の問題と、パックのリサイクル問題がある。牛乳に含まれるたんぱく質は、分解されなかったものが汚泥として残り産業廃棄物となる。これが水質汚濁の点で大きな問題となっているそうだ。全国の牛乳の生産量の1割を占める学校給食の牛乳でも約2割近くが脂肪分と肥満と短絡しているからと思われ、残乳となっている。
北原さんら全国牛乳容器環境協議会メンバーは牛乳を薦めるために、学校に足を運び、カルシウムなど栄養の話、バランスのいい食事についての話などをするそうだが、この水質汚濁のことも伝え、給食の牛乳を残さないように子どもたちに呼びかけている。
「先生方も授業で、環境問題を取り上げる際、子どもたちが毎日飲んでいる牛乳を教材にして欲しいと思います」
牛乳パックのリサイクルに関しては、1992年頃から本格的に自治体や企業が取り組むようになった。家庭や学校でも牛乳パックのリサイクルが積極的に行われるようになり、現在はいろいろなルートで牛乳パック総生産量の約23・2%が回収されている。
「再生するためには1つひとつのパックを洗って切り開き、十分に乾かさないと処理できません。ですから学校で回収する場合も牛乳を飲んだらすぐに洗って乾かしてもらえるといいんですが」明治乳業では、守谷(茨城)工場などが中心となって自動的に洗って開いて乾かした状態にできるような機械を独自に開発中だが、まだほとんどの工場では、回収されたパックを手で開けるような作業をせざるをえないという。
また消費者には牛乳パックがどうやってできているのか認知されていないところがある。「今だに、丸まる一本の木を使って牛乳パックを作っているのではないかと思っている方が多いようですが、間伐材や製材工場で出された端材やおが屑を使ってパックができているということを知らせることも行っています。決して環境を破壊して生産されているのではないということを知ってもらいたい」と北原さん。
これまでの生産体制というのは大量生産、大量消費、大量廃棄という図式でなりたっていたが、現在大量廃棄をしないという制約が出てきている。
食品メーカーとして、まずできることとして商品の包装のスリム化を徹底し、さらに牛乳パックなどのリサイクルの啓発活動を小冊子などを作成して積極的に行っているということだ。
(教育家庭新聞99年1月9日号)