連載 環境に取り組む企業
第3回 秋には環境・エネルギー館オープン・・・東京ガス
「電気・水道・ガス」はライフラインといわれ生活の生命線。電気は全国を9電力会社が、水道は各地方自治体が供給しているが、ガスが244社の民間会社によって供給されていることはあまり知られていない。その頂点に立っているのが関東地区を中心に860万世帯をカバーしている東京ガス株式会社。資本金1418億円、年商8804億円、従業員1万2236人のマンモス企業だ。この会社が今、総合的環境対策の最も進んだ企業として注目されている。
同社の環境対策の第1歩は都市ガスの原料に天然ガスを採用した1969年に始まる。天然ガスは大気汚染物質のSOx(硫黄酸化物)の発生がなく、NOx(窒素酸化物)も石炭の半分以下、石油の60%以下、地球温暖化で削減が騒がれているCO2(2酸化炭素)も石炭、石油に比べて大幅に少ない。クリーンエネルギーと呼ばれ環境に優しい理想的な原料。1988年には天然ガスへの燃料変更を完了している。主原料のクリーン化を達成した東京ガスが次に着手したのが配管パイプのポリエチレン化。従来の鋼管や鋳鉄管に代わる緑色や黄色のガス管。腐らず地震にも強く、軽くて工事もやりやすい特長を持つ。すでに200ミリの太い管も開発され、21世紀には大部分のガス管がポリエチレンに代わるという。しかも工事の際に出る切端などのリサイクル化も成功させている。この取り組みに対して平成9年度の通産大臣賞を受賞している。
主原料、配管という事業の基幹部分の環境整備を達成した東京ガスは公益法人としての使命として社内社外を含めての「環境総合政策」を1992年に策定。社長直属の環境会議(政策立案)環境部(実施推進)の組織によって幅の広い活動を展開している。98年東京ガスエコレポートの主な項目だけを拾ってみても1環境マネジメントの強化2地球温暖化防止・大気環境の改善の大項目の中に細かく実施施策が組まれている。5の社員の環境意識の高揚と地域環境保全への参画では社員研修、意識啓発、環境情報の提供、環境意識調査が実施され全社員上げての対策となっている。
社会活動では1995年からの「エコ・クッキング」は延べ120回4000人以上が参加。環境NGO「どんぐりの会」の協力で実施している「どんぐり植樹祭」「自分で拾ってきたどんぐりを育てる」「苗木にして山へ移植する」「翌年植樹するためのどんぐりを拾ってくる」という、植物の成長を観察しながら環境を考えようとする息の長い活動で注目されている。また、先の長野オリンピックでは天然ガス自動車60台を提供。VIP送迎用や連絡車として活用された。
97年度の環境投資は直接投資だけで59億円、これには社員の給料など間接費は含まれないので総額は膨大なものになる(環境部副部長前川宗雄氏談)。平成10年11月横浜市鶴見区に東京ガスの企業館「環境・エネルギー館」がオープンする。『集まれ、地球大好き人間!見て、触れて、体験して地球大好き人間の輪を広げよう』と呼びかける同館は、環境対策に挑戦する企業の代表「東京ガス」のすべてを見せてくれる。
(教育家庭新聞98年9月12日)