エネルギー講座 第3回

原子力の安全対策
何重もの放射線対策

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 原子力発電と聞くと、危険なものであるというイメージが強いのではないだろうか。確かに原子力発電所の運転により、放射線が周辺にごく微量放出されているが、その放射線の量は十分低く抑えられており、自然界からの放射線の量よりもはるかに低い。
 日本の原子力発電所ではあらゆる危険を想定し、安全を確保するため様々な機能を働かせている。原子力発電は、放射性物質がたまるが、これを外部に放出されるのを防ぐために閉じ込めることが何よりも大切である。

 そして仮に異常事態が発生しても、「止める・冷やす・閉じ込める」の考えのもと、拡大を防止するため、何重もの工夫がしてある。
 まず第1に機器の故障や破損といった事故の原因となるような異常を設計の段階から極力未然に防止している。運転中に各機器に加わる温度などに対して、機器が十分耐えられるような余裕のある設計が行われ、機器や器材は高性能・高品質のものを使用。また日常的な機器の点検を行う他、年に1回原子炉を止めて機器の分解点検を行うなど、厳しい検査を行っている。運転員・保修員についても定期的に教育・研修を実施し、安全確保に努めている。
 さらに地震などの自然災害対策も万全である。原子力発電所の重要な機器や建物は、地震の原因となる活断層を避け、固い岩盤の上に固定されており、発電所内の地震計が大きな揺れを感知すると、原子炉は自動的に停止するようになっている。また考えられる最大の地震に耐えられるように設計されている。

 第2に、万が一異常が発生した場合それが拡大しないよう対策がとられている。配管などから漏れが生じた場合などには、異常が小規模なうちに検出できるよう各種の自動監視装置が設けられている。そして、緊急を要する異常を検知し、原子炉を停止する必要がある場合には、多数の制御棒を一度に入れて原子炉を自動に停止できるようになっている。
 さらに第3の対策として、冷却材が流失するような最悪の事態まで想定し、原子炉の燃料を冷やすための非常用炉心冷却装置や放射性物質を閉じ込める原子炉格納容器を設けている。
 このような厳重な安全対策を行うことで、日本の原子力発電所のトラブル件数は年々減少している。1997年度のトラブル件数は合計で25件、1基あたりの報告件数は0・5件であり、いずれの場合も国際原子力事象評価尺度(※1)がレベル1以下であり、周辺環境への放射性物質による影響はなかった。

 なお、トラブルが起こった場合、電力会社は、国や自治体に迅速に通報するとともに、トラブル情報をインターネットのホームページなどで公表している。(※1 原子力発電所で発生したトラブルの大きさを、どこの国でも同じ目安で知ることができる指標)
(教育家庭新聞1999年4月17日号)