原子力について学ぼう
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茨城県東海村のJCOウラン加工工場で昨年9月30日に起きた臨界事故は、違法な作業手順のために装置から中性子など大量の放射線が放出され、付近にいた作業員が被ばくした事故。原子炉や建物そのものが破壊され、放射性物質が周囲にまき散らされたチェルノブイリ発電所事故とは、その点が大きな違い。
JCO事故で放出された中性子線は「放射線」の一種。放射線はこれ以外に、自然界にもあるアルファ線、胸部検診に使われるエックス線など様々な種類と性質がある。
一方「放射性物質」は、「放射線」を出す物質のこと。イラストのように放射線が光だとすると、放射性物質は光源である懐中電灯に相当する。そして放射線を出す能力のことを「放射能」という。
主な放射線には、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、エックス線、中性子線があり、それぞれ物を通り抜ける力の「透過力」が違うので、さえぎれる物質も異なる。アルファ線は紙で、ベータ線はアルミニウムなどの薄い金属板、ガンマ線とエックス線は鉛や鉄の厚い板、中性子線は水やコンクリートで止められる。
放射線は生活の身近にある
放射線を受けたことによる体の影響を、シーベルト(Sv)という単位であらわしている。1Svは1000ミリSvだが、どの程度の影響だろうか。
全身に放射線を受けた場合、影響の現れやすいと考えられているのがリンパ球減少だが、500ミリSv程度を一度に受けないと症状が現れない。(国際放射線防護委員会の1990年勧告)
JCO臨界事故で死亡した作業員は、大量の放射線を一度に被ばくした。全身被ばくの場合で人体への影響は、1000ミリSvで10%の人が悪心・嘔吐を感じ、4000ミリSv前後で50%の人が死亡、7000ミリSv〜1万ミリSvで100%が死亡するというのが目安だ。(「ICRP Pub・60」他)
日常生活の中にも様々な放射線や放射性物質がある。
宇宙や土壌・食物中の放射性物質から受ける「自然放射線」の量は、世界平均で年間約1・1ミリSv。(1993年「国連科学委員会報告」)
この他、人工放射線の代表として、胃や胸部エックス線検診、コンピュータ断層撮影検診などから受ける放射線がある。その線量はコンピュータ断層撮影検査で約6・9ミリSv、胃のエックス線検診では約0・6ミリSv。日本人は平均で年間2ミリSv程度の医療被ばくを受けている。(科学技術庁「生活環境放射線」)
放射線から身を守る基本は「距離」、「時間」、「遮へい」。放射線の影響は、距離の2乗に比例して弱まるので、放射線源から100メートル離れると、1メートルの位置の1万分の1になる。「避難」が有効なのだが、その時間がない場合や少量の放射線ならば「屋内退避」でも、透過力の弱い放射線はさえぎることができる。さらにコンクリートの建物や塀なら、その効果が大きいと考えられている。
万が一の場合には、国・地方自治体・電力会社などが一体となって迅速な対応ができるよう、「オフサイトセンター」が原子力施設のある地域近隣に設置される計画で、同センターから関連個所への指示・指揮監督が行われる。
住民には地方自治体から「屋内退避」や「避難」などの対策が指示されるので、憶測での判断をせず、地方自治体からの指示に従うことが混乱を避けることにつながる。
(教育家庭新聞2000年6月24日号)
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