「安全対策」NSネットへの期待
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昨年9月30日に発生した、茨城県東海村のJCOウラン加工工場臨界事故を受けて、NSネット(ニュークリアセイフティーネットワーク、牧野昇理事長)が昨年12月9日設立された。原子力の安全文化の共有化・向上を図る目的で、原子力産業に関わる35の企業・研究機関で組織されている。
さらにNSネットの活動全般を、第三者の立場で評価・意見を行う「評議員会」(有識者、評論家など7人)も、今年4月に設置。これによって事故再発の防止と、今後一層の安全性のレベルアップについて、期待されている。
同ネットの事業内容について、今年度の事業計画からみると、主に「原子力安全文化の普及」、「会員間の相互評価(ピアレビュー)」、「原子力安全に関する情報交換・発信」の3項目。このうち「会員間の相互評価」については、すでに第1回の相互評価が4月18日〜21日、燃料加工メーカーである三菱原子燃料(株)で実施された。
「安全文化」について同ネットは、「利益追求の企業においても、安全性追求を優先して事業に向かうという風土・慣習を・安全文化・と呼んでいます」と記述。会員間のセミナー、教育支援、相互評価、情報交換などによって、原子力産業に携わる各会員間の「安全文化」の共有化・向上を図るという。
「相互評価」(ピアレビュー)とは、会員の専門家によって構成したチームが、会員の事業所を相互訪問し、原子力安全に関する組織・運営、教育・訓練などを中心とした課題の摘出や、良好事例の水平展開を行うもの。WANO(世界原子力発電事業者協会)の手法を参考にしている。
三菱原子燃料(株)で行われた第1回ピアレビューは、同社以外の5社と同ネット事務局の合計7人で構成されたチームで実施。第1グループが組織・運営、緊急時対策、教育・訓練の分野、第2グループが運転・保守、放射線防護の分野、第3グループは重大事故防止の分野を担当。現場観察を中心として提出資料の確認や議論、従業員の面談などを通じて、良好な事例や改善点の洗い出しが行われた。
その結果、「原子力安全の面で直ちに改善措置を施さなければ重大な事故の発生に繋がるような項目は見出されず、また、同社の管理層及び従業員が一体となって、原子力安全確保を継続・強化していくために真剣に取り組んでいる実態が確認された」(5月12日「相互評価報告書」から)という結論だった。
さらに他事業所への良好事例として、1外部機関の指導による広範なマネージメント活動TPMが全従業員参加で展開され、事業運営の効率化だけでなく安全性向上にも寄与2現場における安全確保のノウハウが「安全の手引き」として集大成され、技術伝承に活用されている3臨界安全管理の設備・機器が明確で管理方法・内容が充分検討されている、などが報告されている。
(教育家庭新聞2000年5月27日号)
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