学校栄養士を訪ねてD

  話すよりもまず実物を提示

             千葉県・萩原小学校 近藤 敦子さん
 

 今年度の学校給食功労者に選ばれた茂原市立萩原小学校(宮川幸子校長・児童数730人)の近藤敦子さん。子どもたちを喜ばせるため、給食の献立に様々な工夫を凝らしている。取材に訪れた日は、ちょうど学校でクリスマス会が行われていて、給食で出されたシチューには花形に切ったにんじんが添えられていた。「子どもたちに愛情いっぱいのメニューをと心がけいろいろと工夫しています」と近藤さん。
 玄関から近藤さん専用の部屋にいく途中の廊下には、給食や栄養に関する掲示物がたくさん展示してある。その月ごとの行事によって、近藤さん自身が作り替えているということだ。給食調理場の真向かいにある部屋にはこれまでの掲示物や食の指導に使う資料が溢れている。気軽に子どもたちも訪れ、まるで萩原小学校には保健室と同じような感覚の栄養室があるといった感じだ。
 

地域にも参加を呼びかけての米の収穫祭

萩原小学校では、学校行事の一環として毎年11月に全校で米の収穫祭を盛大に行っている。体験学習として2年生が田植えをし、5年生が稲刈りをした新米を炊き、地域の人にも参加を呼びかけて校庭で一緒に新米を使った給食を食べる。今年度は900食を用意。その日の午前中に行われたセレモニーでは、近藤さん自作のOHPを使った紙芝居「お米について」で全校生徒に話をし、指導の場とした。
 「この学校は食に対して熱心な先生が多いので、食の指導もやりやすいです」先生の方から頼まれて食の指導を行う場合が多いそうだ。子どもの体験を重視した授業つくりを心がけているという。家庭科の調理の時間にもT・Tとして指導にあたっているが、ポイントとなるところをしっかりと指導している。「子どもたちが自分たちでどんどん発見し、自分でできたんだという満足感を持つことが一番大切なことだと思って指導しています」近くの畑で自分たちが作ったサツマイモや米を材料に使うとより興味もわいてくる。
 「話すよりも、まず実物を」授業では畑から獲ってきたにんじんやジャガイモなど実物を教材として使ったり、調理室のしゃもじを教室に持ち込んで家庭のものと比較させ、調理員への感謝気持ちをもたせたり、苦労を伝えたりして指導している。「O157の食中毒が起きてから、調理現場での衛生管理が以前より徹底されたので、その上栄養指導を積極的に行っていくことは時間的に本当に大変なことですが、やりがいがあり、責任の重さも強く感じるようになりました」
 献立づくりは毎日の残菜を確認しながらよりよいものをと励んでいる。「食事というのは、これでいいというものではありません。今度はもっとおいしいものを作ってあげようと日々努力しています」食べる側に立って、まごころを込めて作っていることがうかがえる。
 

 今までで一番嬉しかったことは何ですかとの質問に「熱があって体調が悪くても給食を食べていくと言い張った子どもがいました。毎日給食を楽しみにしてくれていることがわかり、とても嬉しかったです」と語る。「子どもの日々の成長はすばらしいものです。その一助になればと思い日々活動しています」。

(教育家庭新聞99年1月9日号)