前号では、「リサイクル」の仕組みを作り普及させてきたスチール缶リサイクル協会の取り組みを紹介した。そのスチール缶の原料は「鉄」だが、どのように資源となっているのか。
まず、鉄であることの利点は製鉄工場の磁力選別機によって「簡単に分けられること」が挙げられる。その効率さが最初のポイントとなる。
そして前号で紹介したように分別収集のルートが確立され、製鉄工場が全国に存在し「回収→再生」のシステムを保持しているからこそ、90・8%(平成24年度)という高い再資源化率となっているのだ。
私たちは日々ジュースやコーヒーなどの飲料缶、海苔やお煎餅といった食品缶(一般缶)など様々なスチール缶に囲まれている。アルミ缶と比較すると強度が強いため、高温殺菌が必要なコーヒー缶(レトルト飲料)などに多く使用されている。もちろん、炭酸やビール系飲料でも使用可能である。
特にミルク入りに関しては腐敗の可能性があるため、スチール缶であることが重要となっている。品質を保証するために行う音波を利用した特別な検査方法である「打検」は、缶の底を叩いて振動数を解析し、真空度異常の有無を検査している。
強度が強いからと言って厚く重いわけではない。長年の技術開発により、強度と加工性が両立し軽量化に成功している。軽量化すなわち輸送コストの低減にもつながっている。
1600℃の高温で溶かし再利用 |
そして、私たちが飲んだり、食べたりした使用済みのスチール缶は1600℃の高温で溶かされ、ピュアな鉄となり、スチール缶として、さらには電化製品や自動車、橋など鉄が使われている製品として私たちの身の回りに戻ってくる。鉄製品は世界では約16億トン生産されているが、日本国内では約1億トン。「何にでも」「何度でも」生まれ変わる、無限の可能性が秘められている素材と言えるだろう。
さらに、製鉄工場は全国80か所あり、分別回収後は輸送距離が短く地球環境にも優しい。生産時に使用されるエネルギーは鉄鉱石から作る時の約4分の1で、二酸化炭素の発生は約5分の1となり、リサイクルされることで地球環境への負荷を軽減している。
スチール缶リサイクル協会では、Web(http://www.steelcan.jp/)やエコ関連のイベントを通じて、これらの情報を広く発信している。子供達にもこれを学び、理解してほしいと「スチール缶リサイクルポスターコンクール」を実施(10月31日まで募集中)し、また、資源を大切にする心や子供同士の連帯感の育成などを教育の一環に位置付けている小中学校へ対する支援活動も行っている(10万円/校相当の物品支援、11月30日まで受付中)。
【2014年8月4日】
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