新連載

循環型社会を持続する(1)リサイクルの原点

世界的規模で環境問題が課題となる中、「持続可能な開発のための教育(ESD)」が始まり10年目を迎えた。日本の環境教育は、経済発展の歴史と密接に関連してきた。本号よりその歴史を3回の連載で振り返り、「循環型社会」を育む未来へのヒントを探る。

環境教育の転換期

一般廃棄物(ごみ及びし尿)の最終処分場の残余年数は19・3年‐。

この数字をどのように捉えるだろうか。高度経済成長に伴い、日本は公害やごみ問題を抱えてきた。その変遷と同じくして、環境教育は学校現場でも取り組まれてきたが、学びの手法は様々。今では当然のように学習で使われている「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」の発想が生まれきた歴史を振り返ると、日本の環境教育が見えてくる。

リサイクルに関する法律の流れ 環境教育の流れ
1900年(M33) 汚物清掃法 1967年全国小中学校公害対策研究会発足
(1975年全国小中学校環境教育研究会へ)
1968年小学校の指導要領に「公害」の用語初出
1954年(S29) 清掃法
1970年(S45)廃棄物処理法
1991年(H3)  再生資源利用促進法 1990年日本環境教育学会発足
1991年文部省「環境教育専門官」設置
1992年文部省が環境教育指導資料を作成
1993年(H5) 環境基本法
1995年(H7)  容器包装リサイクル法
2000年(H12) 資源有効利用促進法 2003年環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律を制定・公布 (2011一部改正)
2006年(H18) 容器包装リサイクル法改定
■1Rから3Rへ

日本における廃棄物処理システムは1900年の「汚物清掃法」に溯り、それを継いだものとして54年に「清掃法」、70年には「廃棄物処理法」が成立。そして70年代から一般的に「リサイクル」という言葉が使われるようになり、91年「再生資源有効利用促進法」の成立で"1R(リサイクル)"の言葉が初めて法律に使われた。そして2000年に「資源有効利用促進法」と改正され、3Rの考えが生まれた。そこで「循環型社会」の土台が用意されたのだ。

■日本のごみ排出の現状

環境省の平成23年度調査によると、ごみ総排出量は4539万tでその約65%が生活系のごみであり、日本人は1人1日当たり975gを排出している。そのうち市区町村等による資源化と住民団体等による集団回収とを合わせた総資源化量は930万tでリサイクル率は20・4%だ。

ごみの多くは、プラスチック容器包装、ペットボトル、飲料缶、トレイ、紙パックなどなんらかの容器に包まれているが、日本では容器包装リサイクル法に基づき、容器包装廃棄物の排出抑制の促進を法制化し、分別収集を通じて3Rを行ってきた。

■ESDと環境教育

環境教育はもちろんごみ問題だけではないが、日常的な課題としてそこを原点に地球規模の環境問題について学んでいるのが現在の教育現場だ。国連は、2005年より「国連持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」とし、活動を続けてきた。

そして今年11月には、10年の活動を振り返り2014年以降の方策についての議論を行うユネスコ世界会議が、愛知県名古屋市で開催される。まさに今年は、環境教育のターニングポイント。その歴史を振り返り、子供達を新たな学びに導く大切さを考えてほしい。

◇ ◇ ◇

次回は、容器包装排出抑制の観点から、73年に「あき缶処理対策協会」を設立しスチール缶の散乱防止、資源再利用に関する仕組みを確立してきた現・スチール缶リサイクル協会の活動を紹介する。

【2014年6月2日】

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