スマートフォン(以下スマホ)の流行に伴う変化の2回目です。不登校に続いて、いじめについて書きます。
学校でのいじめも変化しています。ネットいじめが増えてきたからです。ネットいじめの場合、ターゲットが決まると急速に広がります。さらに被害者は24時間逃げ場がありません。ガラケーが流行しはじめた2009年頃から対応に苦慮する先生方が増え始めました。学校現場や各教育委員会だけでなく、文部科学省等、国の機関も対策に乗り出しました。甲斐あって、2012年くらいにはこの種の問題は一度、収束しかけました。
しかし、子供たちの使用端末がガラケーからスマホに移行し、しかも低年齢化が急速に進んでいるため、状況が変わってきています。
ガラケー時代は、匿名で悪口を何度も送る等、明確な悪意を持った誰かがいじめを行う場合が一般的でした。
子供たちがよく利用するのが「学校裏サイト」と言われるホームページ等で、そこでは匿名でのやりとりが可能だったためです。
しかし今の中心のLINEでは本名を明かしてやりとりしているので、匿名での攻撃は基本的にはできません。そのかわりにLINE等でのちょっとした言葉の行き違いがきっかけでケンカ等のトラブルに発展するケースが増えています。誰も悪意は持っていないのに、結果としていじめに発展してしまいます。先日関わった中1のケースを紹介しましょう。
「テストで利根川を利寝川と書いて78点。死亡」とLINEのグループチャットに書いたA子に対してB子は「あほちゃう」と返答しました。のちにB子は「A子の自虐ネタを軽く笑いにするつもりだった」と述懐していますが、A子は78点を馬鹿にされたと激怒しました。B子以外全員を誘って新しいLINEグループを作り「最近B子、調子乗ってない?」とやんわりとB子いじめを提案。A子はクラスのリーダー格だったこともあり、誰もB子に話しかけなくなり、B子は不登校状態になってしまいました。一部改変していますが、悲しい実話です。
■いじめ指導も変化
指導方法も変化しています。加害者が複数いる場合は、同時に別の場所で指導します。時間差があるとLINE等で口裏を合わせるからです。中学校や高校ではもはや常識ですが、小学校では知らない先生も一部いるので、たいへんです。
また、いじめ指導の一部始終をスマホで録音させられた小5もいます。同じクラスの首謀者が真実を暴露させないために強制的に録音させたのですが、この録音を保護者が聞くところとなりました。録音を聞くと、担任の先生は1時間以上正座させた上で「いじめは犯罪だ」「死んだら殺人者だ。死んでお詫びするか?」等、かなり感情的になって叱りつけていました。聞いた父親は「いじめたのはうちの子が悪いが、ここまでする必要があるのか」と猛抗議。裁判も辞さない勢いです。他には、指導途中にトイレから状況を報告していたケースもありました。加害者が複数いるいじめ指導は「全員同時に、別室で、スマホを出させてから」が常識になっていくのかもしれません。子供も、大人もたいへんな時代です。
【2015年12月7日】
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