連載

スマホ時代到来(25) 〜今、大人が知っておきたいこと〜兵庫県立大学 准教授 竹内和雄

常識ギャップを埋める

「先生、常識ですよ」

line画面
生徒とのLINE

先日、研究室に出入りする学生に言われた言葉です。失礼な発言のように読めますが、実はそうではありません。

私は以前は学生とのやりとりはメールでしており、メールのマナーは厳しめに教えていました。例えば、目上の人には「了解しました」ではなく「承知しました」と指導。学生たちも戸惑いながらも、すぐに慣れていました。

それが2年ほど前、LINEが流行しだしましたので、研究目的も兼ねて学生とのやりとりをLINEにすることにしました。研究目的なので、うるさいことは言わないことにし、逆に「いつも通りの言葉遣いで」とお願いしました。

学生たちは、最初はやはり「承知しました」。「普段通りで」と返すと「了解しました」。さらに頼むと、女子学生中心におもしろがりだしました。「了解しました」は「了解」になり、「りょ」から最後は「り」になりました。ある学生は「R」。笑ってしまいました。

短文化の傾向は知っていましたが、ここまでとは思っていなかったので、勉強になりました。

駅での待ち合わせ

スマホ対策を話し合う学生達
スマホ対策を話し合う学生達

先日、大学の最寄り駅で待ち合わせる必要があり、左上のようなメッセージを送りました。最後の2つが前日の5時頃に送った私の言葉です。

しかし、です。その後、待ち合わせに全員が集合するまで、だれも返事を返してきません。これにはさすがに私も腹が立ちました。当日、待ち合わせ場所に集合した学生たちに「いくらなんでも返事は必要です。いつの時代も常識です」という趣旨の発言を少し厳しめに言いました。学生たちは顔を見合わせ「先生、既読つけましたよ」。

よくわからないので詳しく聞くと、彼らの言葉の意味は、「『既読5』と表示されているから学生全員が読んだことは伝わっているはずだ」という意味でした。

冒頭の言葉は、そのときの学生の発言です。

正確には、「私たちには常識ですよ」です。私はすぐに謝罪しました……。

常識ギャップ

彼らは彼らなりの「常識」で生活しています。よく彼らが「常識がない」と私たちの世代に言われることがありますが、厳密には間違いで、彼らにないのは、「私たちの常識」です。

つまり、今回、私たちが直面したのは、そういう「常識ギャップ」で、今、必要なのは、このギャップを埋める作業なのです。

 

【2015年7月6日】

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