教育委員会対象セミナー・東京 ICT機器の整備計画/校務の情報化

今年度初となる第40回教育委員会対象セミナーが7月4日、東京都内で開催され約110名の教育委員会・教員が参加した。セルラーモデルの情報端末を児童生徒用に約8000台導入する渋谷区教育委員会や初めて校務支援システムを導入した那須塩原市教育委員会などICT環境の整備・計画・活用に関する事例が報告された。今年度セミナー予定は教育家庭新聞Web(www.kknews.co.jp)へ

タブレット端末を整備 次世代システムも活用 世田谷区立船橋小学校・新村出校長/壺井智裕主幹教諭

授業改善で「楽しく」「深い」学びへ

世田谷区立船橋小学校 新村出校長
世田谷区立船橋小学校
新村出校長

世田谷区立船橋小学校は、区の研究開発校(情報活用能力)として「もっと『楽しい』授業へ」をテーマに、「主体的・対話的で深い学びの視点から〜情報活用能力の育成を意識して」を副主題に研究に取り組んでいる。

校内研究会では、9つのマスからアイデアを生み出すマンダラート発想法やマインドマップの手法を取り入れ、楽しい授業、「主体的・対話的で深い学び」に必要なことなどについて意見を出し合い研究を重ねている。

新村出校長は「研究会後に若い先生が『校長先生、研究って面白いですね』と話しかけてきた。研究会で教員自身が主体的・対話的で深い学びを行い、それまでの自分よりもう少し深い自分に到達できたという実感からその言葉が出てきたのでは」と語る。

船橋小学校には、児童用タブレット40台、教師用1人1台のタブレット、共用のノート型PC、校務処理用のノートPC(指紋認証)がある。また、各教室に実物投影機、50?提示機器(一部電子黒板)、情報コンセント(有線)と移動式アクセスポイントがあり、教室から校内サーバ、コンテンツサーバにアクセスできる。
校務支援システムも導入され、データ共有により、会議時間がかなり短縮されているという。

IoT百葉箱でデータ活用学ぶ

次世代システムの活用にも積極的だ。

大学と連携して、教室内の二酸化炭素、温度と湿度を継続して測り、ネット上にアップしている。
校長室前の庭には、自給電式のIoT百葉箱を設置。現在は第2世代だ。第1世代の百葉箱が壊れた原因は児童が明らかにした。タブレット端末を使って、落雷があったときにセンサーが異常値を示したことを発見したという。

IoT百葉箱は北海道から沖縄まで、全国の特定か所に設置され、気温と気圧、湿度が比較できる。その観測データを毎日のように見ている児童もおり、教科書に書かれていない気象現象を発見した。「データと関連させて、これからのことを考える子供を育てたい」と語る新村校長の思いに応える児童が育ちつつあるようだ。

ICTで授業改善に効果

日々の授業の取組については、壺井智裕主幹教諭が報告した。

実体験から学ぶことを大切にしており、例えば算数では自分の歩幅から校内の距離を計測。少数と分数のグループに分かれて、各グループで数と分数の長所と短所についてディベート形式で話し合う。次の日には立場を入れ替えて話し合いを重ねた。

実物投影機で教科書や児童のノートを大きく映す、自作教材の活用、デジタル教科書のワークシートも活用して「深い学び」を意識した授業設計を展開している。

ICT活用について、新村校長も壺井主幹教諭も「授業を改善しようという教員の意識と重なったときに、ICT活用の効果が現れる」と、「授業改善が先」と口を揃える。

学習のめあての明確化、教科横断的な年間計画の再構築、カリキュラムマネジメントの推進など研究を深め、来年度に研究開発校(情報活用能力)として研究発表を行う予定だ。

【講師】世田谷区立船橋小学校・新村出校長/壺井智裕主幹教諭

 

【第40回教育委員会対象セミナー・東京:2017年7月4日

【2017年8月7日】

1、東京大学CoREFユニットリーダー 白水始教授 2、渋谷区教育委員会 加藤聖記副参事
3、那須塩原市教育委員会 相楽尚志係長 4、世田谷区立船橋小学校・新村出校長/壺井智裕主幹教諭
5、千葉県一宮町役場 山口裕之課長補佐

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