(上)近畿大学キャンパス (下)広島大学外観 |
教育系や事務系のシステム運用において、学外のクラウドサービスを活用する大学が増えている。
かつては運用面などにおいて不安視されることもあったクラウドサービスだが、今は品質も向上し、コスト面でもオンプレミス(情報システム設備を大学が保有し運用すること)と比較すると優位性があることなどから、多くの大学が注目している。クラウドサービスを提供する企業の中でも近年、多くの大学に採用されているのがアマゾン ウェブ サービス(以下AWS)だ。
AWSはネット通販事業のAmazon.comの関連会社。あまり知られていないが、同社は平成18年からクラウドサービスを提供しており、現在は約190か国以上で利用されている。同社の発表によれば、今年第一四半期の総売上(約三五〇億七〇〇〇万ドル)のうち、AWSの売上はわずか十分の一程度だが、営業利益は約九割を占めている。利益面から言えば、同社にとってクラウドサービス事業は大黒柱に育っているのだ。
今回は、AWSのクラウドサービスを活用している近畿大学と広島大学を紹介する。
オンプレミスが適切か疑問だった
近畿大学は西日本に6つのキャンパスを展開し、14学部、法科大学院および大学院12研究科を有する西日本最大規模の大学だ。
学生数は、学部3万2322人、法科大学院と大学院合わせて951人(いずれも平成28年5月現在)。完全養殖による「近大マグロ」は、同大学の知名度を全国的に一気に高め、入試志願者数は4年連続で日本一だ。
同大学では平成26年に教育系基幹システムをAWSに移行。翌27年に学内の業務システムをクラウドに移行することを決定し、同年9月から段階的にAWSのクラウドで稼働させている。
クラウドを活用する前、同大学ではこうした大量のサーバ群をオンプレミスで構築・運用するのが本当に適切なのか疑問を持っていたという。
資産管理、場所代、電気代などのコストがかかるほか、トラブル発生への対応、5〜6年ごとの更新などが必要で、コストや手間が増えていくばかりだったからだ。
そこで、クラウドを活用することとし、まず試しにGmailを導入してみた。すると、コストがオンプレミスと比較すると約10分の1に下がったため、他分野においても順次クラウド化を進めていった。
クラウド化によって、平成36年までの10年間で、ハードウェア設置にかかるイニシャルコストを約70%、維持・保守を含めトータルで約20%削減させていく計画だ。
サービスの充実度やスペック拡張性が魅力
広島大学は、11学部(そのほか情報科学部を申請中)、1特別専攻科、11研究科からなる総合大学で、学部生1万887人、大学院生4520人が在籍している(平成29年5月1日現在)。
クラウドサービスの活用は、平成25年9月から人事給与・就労管理システムについて導入を開始した。
以降、財務会計システム、研究者総覧、大学の公式ウェブサイトなどにおいて活用している。
導入した理由について同大学は、業務に応じたサービスの充実度やスペックの拡張性、地震などの大規模災害などへの対策、データベースを使った業務システムとの親和性などを挙げている。
クラウドサービスについては、一部を除きAWSのサービスを活用中だ。AWSを選定した理由は、バックアップの信頼性、データ保障率の高さ、サービスの多様性などを挙げた。
(蓬田修一)
【2017年6月5日】
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