東京藝術大学では「『感動』を創造する芸術と科学技術による共感覚イノベーション」が、文部科学省と科学技術振興機構の「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」に平成27年度から採択され、様々な活動を展開している。
芸術と科学技術を融合させ、教育、医療、福祉などの分野においてコンテンツ発信や文化インフラの整備などを行うのがその目的だ。
ここでは、昨年の活動から、ITや教育に関する3件のプロジェクトを紹介する。
人工知能ピアノとベルリンフィルの共演
人工知能ピアノと弦楽四重奏のコンサート |
平成28年5月、拠点参画企業ヤマハの技術協力で「音舞の調べ~超越する時間と空間」を開催した(写真右)。
AI(人工知能)のピアノ演奏システムが、20世紀最高のピアニストの1人である、スヴャトスラフ・リヒテルの演奏を忠実に再現するだけでなく、名演奏家集団として世界に名高いベルリンフィル・シャルーンアンサンブルの演奏に柔軟に対応し、曲を奏でようというものた。
演奏した曲は、F・シューベルトのピアノ五重奏曲《鱒》イ長調D667第4、5楽章。リハーサルを重ねるごとに「AIリヒテル」のピアノとシャルーンアンサンブルの演奏の完成度が上がり、コンサートでは出だしから息がピッタリと合った演奏となった。
中高一貫校でアンドロイド演劇
(上)中高一貫校でアンドロイド演劇を上演。演出は平田オリザ氏 (下)アートとテクノロジーを融合したワークショップが大好評 |
28年6月、福島県広野町にある県立中高一貫校ふたば未来学園において「アンドロイド演劇」を上演した(写真右上)。
原作・演出は、劇作家・演出家の平田オリザ特任教授。前後半の2部構成で、前半は死を目前にした少女と、少女に詩を読み聞かせるアンドロイドとの静かな対話、後半は運送業者とアンドロイドとの会話を通じて、アンドロイドと人間との関わり、生と死への問い、震災被災者への思いなどを演じた。
アートとサイエンス融合のワークショップ
28年11月には、日本科学未来館(東京・お台場)で開催されたイベント「サイエンスアゴラ2016」へ出展した(写真右下)。
ブースでは「色彩の秘密」と題してクレヨン作りのワークショップを、液晶端末なども使いながら、30分間隔で実施した。
「ワークショップは毎回、予約で満席。アートとサイエンスを融合した領域横断的なワークショップとして大好評でした」(東京藝術大学 社会連携センター COI研究推進機構)。
今後は、今年4月18日から7月2日まで、東京キ美術館で開催される「バベルの塔展」にも特別協力し、拡大複製画の展示や、解説映像の提供を行う。「産学官連携による、さらなる感動の創造とイノベーションの創出を行っていきたい」(同)と、活動についての抱負を語る。
東京藝術大学は「Arts & Science LAB.」(産学連携棟)を上野キャンパスに設置し、大学や企業が単独では実現できない革新的なイノベーションを創出するための環境を整えた。
COIに採択されたことで、ロボットの教育、医療、福祉への活用をはじめとする、芸術と科学技術との融合に、一層効果を上げていくものと思われる。(蓬田修一)
【2017年4月10日】
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