連載

【第35回】ICTキャンパス 徳島大学 理工学部 理工学科

プログラミングで反転授業 冒頭30分の説明が不要に

実習室風景
実習を行っているコンピュータ実習室
実習の様子
実習の様子。回路を製作している学生

授業冒頭の説明なしすぐに実習を開始

反転授業を本格的に取り入れる大学が増えてきた。徳島大学理工学部 理工学科電気電子システムコースでは、マイコンプログラミングの演習授業に反転授業を平成26年度から導入。現在は、さらに効果を上げるための取組がなされている。

反転授業を導入した授業は、1年生後期「電気電子工学入門実験」(必修1単位)の「マイコンプログラミング」3回分の実験授業だ。

受講学生数は約110人で、27人程度ずつ4グループに分けて実施している。マイコンボードArduinoを使い、簡単な電子工作とプログラミングを体験するのが狙いだ。

反転授業を導入以前、2時間30分の授業時間中、冒頭の30分から1時間ほどを実習の説明にあて、残りの時間で実習を行っていた。授業時間全体における説明時間の割合が多く、説明時間の短縮が課題であった。
徳島大学工学部電気電子工学科 芥川正武講師は「反転授業を行う授業は、電気電子システムコースにおける導入科目という位置付けです。そのため、深い専門知識は必要とせず、学生に動くものを作る経験をさせることに主眼が置かれています。授業の趣旨から、手を動かす実習の部分に、できるだけ時間を割きたいと考えていました」と話す。

反転授業を取り入れたことにより、これまで授業時間の中で行っていた説明内容は、事前に動画で視聴できるようになり、授業では基本的に説明をせずにすぐに実習に入れるようになった。

説明動画は9割の学生が視聴

事前説明に使う動画は教員が作成している。

Keynoteでプレゼンテーションファイルを作成。ナレーションを録音し、QuickTimeムービーで書き出して、Youtubeへアップする。動画のURLを知らないと視聴できない限定公開だ。

事前学習用として、動画のほか、PDF形式のテキストと、事前の説明内容が理解できたかどうかを確認するための問題を、徳島大学のLMS(Learning Management System=学習管理システム)に載せている。

芥川氏は「少なくとも実習内容を何も知らずに授業に臨む学生は減りました。電子工作が得意な、あるいは関心の高い学生は、予め、様々な試作に自主的に取り組み、授業では専門的な質問をしてきたり、自分で部品を購入して自主的に回路を組むなど、積極的に授業に取り組むケースも増えました」と効果を話す。

事前説明の動画は、受講学生の約9割が視聴。確認問題の解答率は、授業直前にはほぼ100%になっている。

授業を始める前に、LMSに載せた確認問題の解答状況を集計すれば、理解度の低い内容について、実習時間中に解説を加えることもできるようになった。説明動画の作成、保守、LMSコンテンツの作成などの作業が追加で発生したが、負担はそれほど増加していない印象だという。

どれだけ本気で予習に取り組めるか

反転授業の実施について芥川氏は「学生にどれだけ事前予習を本気で取り組んでもらえるかが最も重要」と話す。

動画は当初、20分前後の長さがあったが、学生の集中力が続くよう3分から8分ほどの長さに分割・再編集した。また、確認問題を増やしたり、予習をやってくるように、しつこく周知したりしたという。教員側が、こうした学生のモチベーションを維持させるための細かな対応を行っていることも、反転授業の効果を上げている要因だと言えそうだ。(蓬田修一)

 

【2016年12月5日】

 

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