教育委員会対象セミナー・京都 ICT機器の整備計画/校務の情報化

私立公立高等学校IT活用セミナーを7月25日東京で、第32回教育委員会対象セミナーを7月28日に京都を開催した。教育におけるICT機器の整備と活用促進に向けて、整備計画や好事例となる発表がされた。次回は10月28日に第34回教育委員会対象セミナーを新梅田研修センターで開催する。
今年度のセミナー日程は教育家庭新聞Web(www.kknews.co.jp)へ

受け身から能動へ 学びの概念を変える 京都教育大学・谷口和成准教授

大学のA・L型授業から小中高の学習を考える

藤川大祐教授
京都教育大学
谷口和成准教授

理科教員養成に携わる谷口准教授は、最近の学生の傾向について「問題は解けるが説明できない、文脈が変われば問題が解けない、すなわち概念が定着していない。これは物理教育界の全世界的な傾向」と語る。その理由を「与えられた問題が解ければそれで良し、という高校時代の授業手法に問題がある。その結果、問題意識そのものが低い」と分析。これを改善するために、大学でアクティブ・ラーニング(A・L)型授業をスタートした。受け身な学習観から脱却して「正しい学習概念を身に付ける」ことが最大の狙いだ。そのためには「これまでの自分の学びがどのような状況であったのかを気づかせること」。具体的には「学習しているはずなのに間違っている(誤概念)」、「日常経験や感覚的な認識と異なる(素朴概念)」、「正解はわかるが説明できない」など、自らの「現状」を把握すること。メタ認知ができれば自然にアクティブになるという。

A・L型授業を進める課題は大きく2つ。

1つが、放っておいても話し合いは進まないという点。「最後に正解さえしていれば良い」と考える学生にとって、「誤っている可能性がある予測」の表明は恥をかく危険がある行為だからだ。

次に、討論には時間の確保が必要であるという点。

「これらを解決するためにはICT活用が有効。電子黒板やタブレットを活用してまとめや意見交換、討論なども行う。クリッカーは匿名性があるので、誤りを恥と考える学生も意思表明ができる」

最初にクリッカーで意思表示。すぐに集計・提示されるので、自分の意見が多数派か少数派かがわかる。授業の終わりには自分の考えの変化を再度クリッカーで表明して変化を確認。誤概念を持つ人が多数派であったか、少数派であったかもわかる。

グループは3人が適切だ。討論の際にはタブレットでグループの意見を集約し、その一覧を全グループに送信して他グループの予想を知り、説明を聞きたい、質問したいことを予め決めておく。グループの考えとして発表すれば良いので、個人が恥をかく危険はなくなり、徐々に討論が始まる。「大事なことは正解を出すことではなく、なぜ自分は誤ったのか、なぜそう考えたのかについて分析できること。良い教員とは、正解を知っているだけでは不十分。どのような誤概念があるのかを多く予測できるほうが良い」

その後の演示実験では、生徒は既に、結果が知りたくてしようがない「アクティブ」な状況にある。

演示実験の際にはセンサー類を各種活用。距離センサー、力センサー、運動解析ソフトなどで、様々な時間や量の変化を計測でき、条件を変えて何度も実験できる。「実験を通した考察や討論、それに伴う定着」が重要なのであり、「時間不足で実験して終わり」では本末転倒。その時間確保のためのICT活用だ。「A・Lは授業効果が明らかに高い。A・Lに取り組むには時間がない、という声を聞くが、A・L=探求活動と考えている教員が多いのでは。生徒が話し合いたい、発言したいというアクティブな状態にあれば、それが講義であってもA・Lだ」

【講師】京都教育大学・谷口和成准教授

 

【第32回教育委員会対象セミナー・京都:2016年7月28日

【2016年9月5日】

1、京都教育大学・谷口和成准教授/2、郡山市教育委員会・渡辺哲雄指導主事
3、姫路市教育委員会・柳井克文係長4、立命館守山中学・高等学校 犬飼龍馬教諭
5、京都市立梅小路小学校・吉井優太郎教諭6、奈良女子大学附属中等教育学校・二田貴広教諭

 

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