表彰式の会場となった春日学園義務教育学校他3校が、市内52校を代表して表彰された |
日本教育工学協会(以下、JAET 野中陽一会長・横浜国立大学教育人間科学部教授)が、教育の情報化の推進を支援するために行っている「学校情報化優良校認定」に、茨城県つくば市内52の全小中学校が認定され、4月26日に春日学園義務教育学校で表彰式が行われた。これまで自治体として全小中学校が認定されたのは、福島県新地町、熊本県高森町・山江村・産山村だが、50校規模での受賞は同市が初めて。前日の25日には「学校情報化認定事業」の文部科学省後援も決まり、今後、認定校の増加が加速しそうだ。本表彰式は5月15〜17日につくば市で行われる「G7茨城・つくば科学技術大臣会合」の開催記念事業として行われた。
今年4月、JAET会長に就任した野中陽一教授は、「つくば市は、小中を通して、教科だけではなく道徳や学活など教育課程全体にICT活用が位置付けられている。情報活用能力の育成が浸透しており地域全体の
JAET会長 野中陽一教授 |
情報化に成功している。実践事例は豊富で圧倒的」と評価した。ICT教育の整備に着手して昨年で40周年を迎えたつくば市は、昨年11月に全国8自治体による「ICT教育全国首長サミット」を開催している。
受賞を受け、同市の市原健一市長は「ICT機器の重要性は十分認識しているが、使う側の創意工夫が不可欠。本市の先進性を認めていただきこれまで以上に積極的に整備したいと思いを新たにした。先生方は一層の有効活用を極めてほしい」と会場に集まった市内の教員に呼び掛けた。
「学校情報化認定」は、教育の情報化に総合的に取り組み、情報化によって教育の質の向上を実現している学校を「学校情報化優良校」として認定するもの。チェックリストのすべての項目の平均が2以上であること、各項目のレベルが1以上を満たした上で、指定されたエビデンスをすべて入力した学校を対象に審査し、認定を付与する。
さらに、優良校のうち特に優れた先進的な取組を行っている学校を「学校情報化先進校」に、優良校の認定を受けた学校が自治体で一定の割合に達した地域を「学校情報化先進地域」に認定している。
熊本県内にもすでに全小中学校が優良校として認定されている自治体があり、先進地域の認定に期待がかかるが、4月の地震を受け、申請の延長などの対応策を思案中だ。野中会長は「優良校は100校を超えた。次は1000校を目指したい。特定の地域が活用するのではなく、日本全体の底上げを進め、持続可能なICT教育を考えていく」と話した。
表彰式会場となった春日学園義務教育学校ではICTを日常的に活用してアクティブな学びを推進している |
この日、表彰式の会場となった春日学園義務教育学校では授業公開が行われ、同校が日常的にICT機器を児童・生徒の学びに活用する様子が披露された。
5年生の学活「家庭学習を見直そう」では、家庭での勉強法について児童がグループごとに話し合い、同市の家庭学習支援システム「つくばオンラインスタディ」と「ラインズeライブラリ」の活用方法について検討していた。また、8年生では、つくば市の独自教科「つくばスタイル科」で「災害時にわたしたちができることとは!」について、ピラミッドチャートを活用して日常の備えや避難行動を考え、防災対策プランをタブレット端末でまとめていた。
このほか、デジタル教科書を使った音楽の授業、スタディネットで考えを共有して面積を二等分する方法を学習した算数、つくば市オンラインスタディを使って詩の表現方法について復習する国語の授業が公開された。
【2016年5月9日】
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