名古屋工業大学は、1905年(明治38年)に、官立名古屋高等工業学校として創立した。現在の学生数は学部・大学院を合わせて約5700人。創立以来、国内有数の産業集積地に立地する工科系国立大学として、百年以上にわたって7万人を超える人材を輩出し、日本の産業社会の礎を築いてきた。
同大学では昨年度と今年度、学内のICT環境をさらに充実させた。最新のICT整備状況について紹介する。
効率的で濃密な
コミュニケーション
今年度、名古屋工業大学では全構成員(学生・職員)のつながりを強化させるため、Skype for Businessを活用したコミュニケーション環境を構築し運用を始めた。
Skype for Businessは、モバイルデバイス(学生や職員の私的端末)などで、音声、インスタントメッセージ(リアルタイムで比較的短いメッセージのやり取り)、オンライン会議、共同作業などができる統合コミュニケーションプラットフォームだ。
これを活用することで、日頃のメッセージのやりとりだけでなく、海外を含む長期インターンシップ時に、異なるPC間の画面・アプリケーションの共有やビデオ会議などで学習指導ができる様になり、より効率的かつ濃密なコミュニケーションが可能となった。一例として、連絡を取りたい相手の在席確認などもできるため、かけ直しやコールバックといったコミュニケーションロスが大幅に減少し、電話コミュニケーションの利便性が向上した。
モバイルシフトを推進
スマホアプリを導入
昨年度は、教育環境、事務環境、基盤システムにおいてICTの整備を進めた。
教育環境では、学生のメール環境を従来のActive mailからMicrosoft Exchangeに変更した。これによりスマートフォンでのメールコミュニケーションがよりスムーズになった。
同大学では、モバイルシフトを進め、スマホアプリを積極的に利活用している。授業の出欠打刻システムもその施策のひとつで、BLE(Bluetooth Low Energy、低消費電力の無線通信)発信機を利用したアプリを開発し導入した。
また、夜間まで実験や研究などのために大学に残っている学生も少なくないが、Beacon(位置情報などを取得するため壁などに設置し、電波を常時発信している装置)を活用することで、学生の居場所を教職員はリアルタイムで把握できるようになり、学生の安全確保にも大きく役立っている。
TA勤務管理システム
入試イベントにも活用
事務環境においては、TA(ティーチングアシスタント)勤務管理システムの運用を開始し、従来は紙ベースで行っていた事務作業を電子化。TA業務に関わるすべての作業をオンライン化させた。
さらに、オープンキャンパスなどの入試イベントにおける学生雇用においても利用できるよう機能を拡張させた。
また、基盤システムは、SINET(Science Information Network、学術情報ネットワーク、通称サイネット。国立情報学研究所が構築、運用している情報通信ネットワーク)の最新版5へと移行し、ネットワークのさらなる安定性を実現させた。
研究メールサーバーも更新し、メール保存容量を50GBへと増大させている。
位置情報データから
個別学習指導が可能に
新しい試みに果敢にチャレンジする名古屋工業大学。整備された最新のICT環境を活用することで、より効果の高い学習支援が行えるようになった。
例えば、位置情報から得られる一人ひとりの学生の行動データを解析することで、優秀な学生に対する個別的な学習指導を行ったり、孤立してしまいがちな学生を発見して、適切なサポートをすることもできるようになる。
来年3月には、5年に1度の基盤システム全体のリプレイスを予定。さらに充実したICT環境の実現を目指している。
【2016年5月9日】
関連記事