特集:アクティブ・ラーニングの実現に向けて

無線LANなしでデータ共有<三原市立本郷小学校>

再生機能で"考え方"を後追い

三原市立本郷小学校(西田千加子校長・広島県)では「思考力・判断力・表現力の育成‐ルーブリック評価を通して」を研究テーマとして、現在コミュニケーション能力の育成に力を入れている。市の視聴覚部会に属している同校の柏原永知教諭は、紙に書き込んだ内容をデータ化・共有できる授業支援ツール「オープンノート(=OpenNOTE)」(大日本印刷)を授業に取り入れてコミュニケーション能力の育成に役立てている。市の視聴覚教育研究部会で公開された4年算数の授業を取材した。

オープンノート
ネットワーク上のモニター、教員用PC
オープンノート用のデジタルペンでワークシートに記入した内容(上)は無線LAN環境がなくても教育用PCに集約され提示(下)出来る

柏原教諭は菓子箱を様々な角度から見せ、「見る角度によって見える形が違う」ことを示して今日の目当て「箱の全体が分かる図の書き方を考えよう」を提示した。

「実際の形」と「目に見える形」の辺、頂点、面の数の違いを把握してから、児童は「箱の全体が分かる図」を「オープンノート」用デジタペンでワークシートに書いていく。

「オープンノート」は、デジタルペンと紙のワークシートだけで1人ひとりの書き込みデータを共有できる授業支援ツールだ。

ペンのカメラがワークシート上の位置情報を読み取り、データ化してBlueToothで直接教員用PCに転送するという仕組みで、無線LAN環境がなくてもデジタル化できる。

再生して
 理解を深める

児童がデジタルペンで書いた「箱の全体が分かる図」は、電子黒板にリアルタイムに提示されていく。そこで柏原教諭は、何人かの「図」を選んで電子黒板に大きく提示。次に「どんな書き方をしたのか見てみよう」と、その児童の「書き方」を再生して見せた。ゆっくりと再生すると、どのような順番で面や辺を書いているのかが見え、「わかった」「そういう書き方もあるの」というつぶやきが聞こえてくる。児童がワークシートに書いた内容がすぐに教材として提示できる点はオープンノートのメリットだ。

紙に書き込み
 データを共有

柏原教諭はデジタルペン導入のきっかけについて「無線LANがなくても児童の書き込みをデジタル化できるので、購入してすぐに活用できると考えた。児童はいつもと同様の作業をしているが、教員はそれをデジタルで把握して授業展開を軌道修正したり、意図的に指名して説明させたり、全体で共有できる。児童の手元に紙として学んだ内容を残すことができる。そのワークシートをノートに貼ることもできる」と述べる。

今後の活用については「デジタルペンの再生機能や、任意の部分を選択して一斉に比較できる機能などをうまく活用して児童の理解を深める活用につなげたい」と語った。

10年先も役立つ力を育む活用を
西田千加子校長

西田校長

西田校長は、ICT活用を積極的に後押ししている。
「10年先の社会を生きる子供たちに必要な力とは何かを考えた時、ICTを活用する力は欠かせない。比較する、分類するなどの6つのスキルを考え方のツールを活用して思考力を育成したり、コミュニケーション能力を育成したりすることを目的とし、そのためにICT活用能力を育成していく必要がある。無線LANがなくてもデータを共有できるオープンノートの可能性に期待している。一昨年度、『H・T・K』(本郷・ためになる・講座)というミニ校内研修で、柏原教諭がICT活用講座を実施した後、タブレット端末を教員が個人で購入するなどの動きがあった。教員の個人持込み端末については、三原市の規定に基づき活用している」と語る。

 

【2016年3月7日】

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