亀岡市立南つつじヶ丘 小学校 広瀬一弥教諭 |
徳島文理大学 短期学部 林向達准教授 |
株式会社NEL&M 田中康平氏 |
■林 新しい学びの実現に向けた、使いやすいインフラ整備は重要です。学校のインフラは緊急災害時用の名目で整備しても良いのでは。せめてNHK for Schoolなどの動画コンテンツを授業で自由に使えるレベルのインフラが欲しいところです。
■広瀬 そうですね。本校でも、普通教室へのインフラ整備と十分な台数の学習者用端末が確保されているとは言えません。その現状において、PC室に行けばいつでもしっかりネットワークに接続して全員が活用できる、という安心感は重要です。亀岡市は本年度PC室更新でしたが、安心して使える環境のため、デスクトップPCにこだわりました。
■田中 デスクトップPCは、性能の割に低コスト。スレート型PCのバッテリーが5年間もつとは考えにくく、再びPC室の機能が注目される可能性があります。いつでも滞りなく学習できるPC室はしっかりと整備した上で、自由な活用を高めていくという方法が良いのではないでしょうか。
今、PC室更新の際に、従来のPCに置き換えて学習者用端末を整備する事例が増えているようですが、PC室にキーボードなしの学習者用端末を導入した自治体の中には、「やはりキーボードが必要」と、次年度から整備内容を変更しているところもあります。
今後は、「PC室の活用度が低い」からPC室を止めたが、新しい整備により教室での活用が活性化して、やはりPC室が必要であると考え直した、という自治体も出てくるかもしれません。
■広瀬 普通教室で無線LAN環境において授業を行っていると、想定外のトラブルはつきものです。学習者端末の代替となるアナログ教材を用意してトラブルの際も授業を滞らせない配慮も重要です。しかし、端末活用が進むにつれ、代替が利かないシーンも増えており、無線LAN環境にも有線LANと同等の安心感が求められています。
■田中 教室内に複数のアクセスポイント(以下、AP)を設置すると、電波干渉が発生し、接続障害の原因となる場合がありますので、1台で40台以上の学習者用端末からのアクセスに耐え得る性能のAPを選ぶほうが安全です。取り付け場所によっては上下階と干渉することもあり、入念な事前調査も必要です。加えて、近隣施設・家屋からの電波干渉等を回避・調整するための管理スイッチや、適正な通信帯域を調整するロードバランサ等が必要な学校もあるでしょう。
■林 授業支援システムのように、一斉に接続するという活用は学校独特のもの。これはネットワークにかかる負荷が高い活用であることを知っておいたほうが良いと思います。
ネットワークをしっかり構築しても、それを受ける端末のアンテナの性能や相性によってその効果を発揮できない場合もあります。
■田中 学校では、端末を特別教室等に持ち運んで使うこともあり、APに共通のSSIDを割り当てるケースが見られます。インターネット接続等はこれで問題ないのですが、ローミング機能により接続先のAPが自動的に切り替わった瞬間に、教員用端末と学習者用端末間の画面転送が切断されることがあります。利用するシステム・アプリケーションが同一APに接続している端末同士でなければ通信できない仕組みを採用しているためです。これについてはAP毎に別のSSIDを割り当て、「この授業・教室ではこのAPに接続させる」という運用等、実際の活用を見通したネットワーク設計が最も重要です。
また、単体でも活用できるシステム・アプリケーションの導入や学習者用端末の「オフライン活用」を上手に取り入れることも円滑な活用のポイントです。
学習者の活用場面をしっかりと想定した上で、ネットワークやシステム、アプリケーションの選定を行う等トータルなデザインが求められています。メーカーやネットワーク会社、導入業者等の間を調整し、最適化できるコーディネータ的人材の有無は、今後の教育ICT環境整備の成否の鍵を握る時代に入りました。
■林 40人が一斉に接続する、場合によっては隣のクラスでも接続するかもしれないと考えたとき、事前にどこまで検証すれば安心か、ということは明示しきれていません。そのときに最善だと思うものを導入し、都度トラブルに対応していくしかないので、安定稼動のための専門家の配置は必要。さらに数年単位でテクノロジーは進化しますから、5年ごとの更新といったレンジではなく、都度最新テクノロジーに対応できる仕組みも求められています。
【2014年10月6日】