教育委員会対象セミナー・大阪 ICT機器の整備計画/校務の情報化

教育家庭新聞社では10月10日、第19回教育委員会対象セミナーを大阪で開催、定員を上回る85名の参加申込があった。関西圏はタブレット端末の整備・活用が進んでいるが、ICT整備・活用に関する3本の講演について、教育委員会参加者からはいずれも「非常に参考になった」というアンケート回答が多く、教員の参加者からも同様の関心が寄せられた。校務支援システムや無線LAN、電子黒板についての関心も高い。今年度は、今後東京、福岡、名古屋、岡山で本セミナーを実施していく。

予算獲得を目指し優先順位つけ整備ー笠岡市教育委員会 高橋伸明氏

笠岡市教育委員会 高橋伸明氏
笠岡市教育委員会
高橋伸明氏

校務支援システムの価値周知

笠岡市は人口約52000人。小学校18校、中学校10校、うち小学校で複式学級が6校、中学校は生徒数20名以下が4校ある。市の人口は減少傾向だ。
 高橋氏は平成22年に県教育委員会から異動になり、笠岡市教育委員会に着任。「当時の市内学校の『ICT環境整備状況』は、授業支援の面でも校務支援の面でも課題が多かった」、と振り返る。

市の教育課題に合わせ段階的に

そこで、財政課の理解を得てICT整備を進めるには、市教委としての教育課題解決とICT整備を結びつけ、優先順位をつける必要があった。

笠岡市では特に、全国学力・学習状況調査の結果や不登校の出現率に課題が表れていた。市教委として授業改善を図り、子供と向き合う時間を増やす施策を推進する必要があった。その一つが教育活動の質的向上のための校務支援システム整備である。

22年度にICT活用授業日常化のための整備事業と校務支援システム整備事業の2つの事業について予算折衝を行った。前者は1回目の折衝で採択され、全教室へ実物投影機などを23・24年度に導入。一方、校務支援システムは当初不採択となり、予算規模を縮小して中学校6校のみの整備に。教育長も尽力するなど、各方面へていねいに説明を行った。予算を確保することができたのは、校務支援システムの意義を理解してもらえたからだった。

その後、23年度小学校2校、24年度小学校2校、25年度小学校3校と段階的に校務支援システムの整備を進めている。また、当初は予算削減のため整備項目から外していた出欠席情報管理機能を後で追加整備した。

今年度はコンピュータ教室等の整備事業を行い、教育ネットワーク内のセンターサーバを整備。28年度の校務支援システムの契約更新時にはセンターサーバ版で小規模校も含め「全校導入」を目指している。

予算獲得後、目的の校務支援システムが導入されるには、仕様書へのシステムの特徴の記述、製品指定の理由書の提出が重要という。

導入後、専門的な研修が必須

また、校務支援システムの活用方法が全教員に理解されるように研修を充実するため、専門インストラクターによる教員研修の実施をセットで契約。県、市、各学校の様式に合わせたカスタマイズにも迅速に対応するメーカーサポートを受けられるようにしている。PC操作に不慣れな教員の「負担感」を軽減するために、メーカーによる専門的な研修会が必須と強調する。

高橋氏は、「現在はまだ、校務支援システムを通知表や指導要録を作る『ツール』としてしか認識されていない面がある」ことを課題としてあげる。成績の基礎点を入力することで得られる様々な分析や、日々の活動記録を入力して全教員が見取った情報を集めて総合所見などを書くための情報が得られるといったシステムの持つ優れた機能が活用されるように、教員に啓発を図っていきたいという。

(講師=笠岡市教育委員会学校教育課参事 高橋伸明氏)

【教育委員会対象セミナー・大阪:2014年10月10日】

【2014年11月3日】

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