加藤ゼミではフェイスブック導入によって、学生自ら考えて能動的に取り組み、ゼミに対する強い参加意識が生まれるようになったという。 加藤准教授にフェイスブック活用の狙いや効果などについて取材した。 |
名古屋芸術大学人間発達学部の加藤智也准教授は、「子供」と「IT」との関わりを研究する担当ゼミナールにおいて、日本ではまだ広く普及していない2010年からフェイスブックをいちはやく導入し、ゼミで活用してきた。
グループ機能とメッセージ機能を利用
加藤ゼミは2004年度から、授業を補完するものとしてメール、メーリングリスト、ホームページを活用。その後もブログなどのソーシャルメディアを積極的にゼミの活動に取り入れてきた。
これらのITツールによって、授業時間外に指導・学習・連絡が可能になったため、週に一度開催されるゼミの時間を有効に活用することができるようになった。
その一方で、ツールが複数にまたがることにより一元的な管理が難しくなり、教員、学生双方にとって、使い勝手は良いとは言えない状況だった。
「そこで、フェイスブックの実名性によるリアルなつながりを前提とした信頼性と、グループ機能やメッセージ機能に着目し、導入することにしました」(加藤准教授)。
導入の目的は、ゼミにおける「効率的な情報共有」「学習意欲の向上」「コミュニケーションの促進」である。
ゼミの学生全員で共有すべきあらゆる情報はグループ機能を利用することとし、投稿を確認したら速やかに「いいね!」を押すことを義務づけた。また、学生個人への連絡は、メッセージ機能を利用することとした。
発表する学生は事前にグループに概要を公表
学生は最初、なかなかグループに投稿やコメントをしなかった。そのため、軌道に乗るまでは教員がある程度、強制力をもって誘導する必要があったという。
徐々に学生も投稿に慣れていくと、導入の有効性が現れてきた。例えば、ゼミに関する情報はフェイスブックで一元管理でき、スマートフォンさえあれば、いつでもどこでも情報を確認できるようになった。
また、学習意欲の向上においても効果が認められた。ゼミでは自分の発表の1週間前までに、グループにテーマや概要を公表し、発表者以外の学生はそのテーマについて予習しなければならない。そのため、ゼミでのディスカッションが活発化し、予習で分からなかった点などを全員で補足しながら理解することができた。
グループでの活発なやり取りがきっかけとなり、ゼミ生同士のリアルな関係の構築も促進された。上級生は下級生の手本となるという意識が芽生え、縦のつながりが強化。卒業後もコミュニケーションが継続している。
3年間利用した学生44人を対象にアンケート調査をしたところ、「ゼミにおいてフェイスブックが情報共有に役に立ったか?」という質問には、全員が「役に立った」と回答。「フェイスブックを利用することで学習意欲が向上したか?」には「向上した」が34人、「やや向上した」が8人、「あまり向上しなかった」が2人。「フェイスブックが人間関係を構築するのに役に立ったか?」の質問には「役に立った」34人、「やや役に立った」7人、「あまり役に立たなかった」3人であった。
「今回は機能を限定的に利用したこと、また教員が学生の利用具合を確認していたため、外部とのトラブルはありませんでした。しかし、フェイスブックではさまざまな使い方が可能であり、今後利用範囲を拡大していったときに、実名ならではの問題も生じる可能性があります。うまく活用するためのソーシャルメディア・リテラシー向上に向けてさらに検討していきたい」と加藤准教授は話している。
【2015年10月05日】
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