第41回全日本教育工学研究協議会・富山大会が10月9・10日に富山県民会館及び富山市内の小中高等学校で開催される。全体テーマ「広げよう学びの世界」(Innovation & Challenge in Toyama)に則り、各校での公開授業やシンポジウム、ワークショップ、講演、エクスカーション、企業展示が予定されている。教育関連の企業展示も65社・団体と多く、北陸新幹線が開通され、東京からアクセス2時間となった紅葉最盛期の富山に、全国から多くの教育関係者が参集しそうだ。
【JAET富山大会】jaet2015.jp/
健康管理・学習履歴分析・持ち帰り
富山市教育委員会では、全小中学校にプロジェクターや電子黒板、書画カメラ、デジタル教科書などを整備しており、日常的な活用が進んでいる。タブレットPC活用の検証も始まり、「新しい学び」に向けた取組を展開中だ。
前回JAET京都大会の公開授業より |
公開授業
公開授業は小・中・高・特別支援学校計6校で開催。すべて近隣に位置していることから、複数校の参観が可能だ。
ノートPC40台も
■富山市立芝園小学校
1年生活・2年算数・3年社会・4年社会・5年総合・6年算数を公開。プロジェクターやデジタルテレビなどの提示環境と書画カメラはすべての教室に設置。パナソニック教育財団ワンダースクール応援プロジェクト指定校としてノートPC40台も配備され、児童の自由な活用が始まっている。
4校を統合した小中一体型の校舎は教室の壁を取り払った開放的なデザインで一見の価値がある。
認識を深める工夫
■富山大学人間発達科学部附属小学校
3年理科・4年理科・6年算数を公開。
研究目標は「思考の活性化による認識の深まり」。児童が新たな考え方を手に入れるためのタブレットPCや視聴覚機器の活用を工夫。
全学年で情報モラル
【大会テーマ】広げよう学びの世界 Innovation & Challenge in Toyama |
10月9日(金) ◆公開授業 富山市立芝園小学校・富山大学人間発達科学部附属小学校・富山市立芝園中学校・富山県立富山中部高等学校・富山県立雄峰高等学校・富山大学人間発達科学部附属特別支援学校 ◆基調講演「広げよう学びの世界」 山西潤一・富山大学教授 ◆シンポジウム「学びの世界を広げるICT活用」本日のReflectionと今後の展開(登壇者は本文参照) 10月10日(土) ◆研究発表 ◆学びの世界を広げるワークショップ (1)デジタル教科書・ノート・教材を活かした授業づくり(2)電子黒板・実物投影機を活かした授業づくり(3)タブレット端末を活かした授業づくり(4)情報教育・思考力育成を目的とした授業づくり(5)特別支援教育におけるICT活用(6)1人1台情報端末を生かす教育委員会と学校の取組(7)学校情報化認定を受けよう(8)スマホ・タブレット時代の情報モラル指導のポイント ◆講演「学びの世界を広げるICTへの期待」 堀田龍也・東北大学大学院教授 |
■富山市立芝園中学校
全クラスの授業を公開。2時間目は全クラスで「総合(情報モラル)」を公開する。1時間目は国語・数学・理科・英語・音楽・美術・保健・自立活動。常設プロジェクターと書画カメラなど日常的にICTを活用して「わかる授業」づくりを展開。
「探求科」を設置
■富山県立富山中部高等学校
2年数学、3年物理を公開。
思考力や探究力、表現力などの育成を目標とした「探求科」がある。生徒の自学自習(家で予習、授業で復習)スタイルを生かしつつ、学力を高めるための少人数・グループ学習活動を取り入れた。
数学では「数学的な見方や考え方の育成」、物理では「物理演習のシミュレーション」についてタブレットPCやプロジェクター等のICT機器を用いて探究活動を効果的に進めるための情報検索・データ分析・シミュレーションの実習を行う。
スマホで提示
■富山県立雄峰高等学校
通信制単位制高校としてキャリア教育や生涯学習に特色を持つ。1年数学(三角比)を公開。スマートフォンとプロジェクターを連携した授業を公開する。
アクティブ・ラーニング
■富山大学人間発達科学部附属特別支援学校
知的障害特別支援学校におけるICTを活用したアクティブ・ラーニングに取り組んでいる。小学部・中学部・高等部において、朝の会やチャレンジタイム、国語、数学、音楽を公開。タブレットPCや電子黒板を活用したチャレンジ活動と、教科における協働学習の授業を展開。
シンポジウム
公開授業を振り返る
「学びの世界を広げるICT活用」をテーマに、各校で開催された公開授業についての報告・意見交換などを4名の教員・研究者(登壇者・以下参照)により展開する。
【登壇者】新保元康校長・札幌市立発寒西小学校/金俊次校長・米沢市立東部小学校/堀田博史教授・園田学園女子大学/木原俊行教授・大阪教育大学
【コーディネータ】高橋純准教授・富山大学
研究発表
116件を発表
12会場に分かれて行われる116件の研究発表は、1件の発表時間を例年より延長する。
タブレット端末を活用した学習履歴の分析(稲垣忠・東北学院大学)や「1人1台のタブレット端末活用によるカラダと心を見つめる健康観察」(岡本多加根・松阪市立三雲中学校)、「小学校社会科の問題解決的な学習におけるタブレット端末持ち帰りの検討」(城井順一・熊本県高森町立高森中央小学校)、「タブレット端末を活用する教師の教授行動の分析と評価」(福田晃・金沢市立十一屋小学校)など、タブレット端末活用に関わる研究発表がさらに増えた。
「情報モラル問題解決力育成における合意形成の指導」(近藤千香・東京工業大学附属科学技術高等学校)などの指導法や、ジグソー法、教員研修や特別支援に関わる研究発表など、実践的な発表も多い。
ワークショップ
企業・団体が全面協力
授業づくりをテーマに8つの切り口(表参照)で展開。初の試みとして、企業・団体の全面協力を得て開催する。講師は現場教員など。
【2015年10月5日】
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