文部科学省では、平成26年度「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」(平成27年3月1日現在)の調査結果を公表した。それによると、学校種による違いがあるものの、タブレットPCの導入、デジタル教科書の導入、校務支援システムの導入などはそれぞれに進捗が見られる。なお本調査結果については、市区町村別データも公表している。
教育用PC
教育用コンピュータ1台あたりの児童生徒数は、小学校で7・2人/台、中学校で6・4人/台、高等学校で5・0人/台。
最多は佐賀県の2・6人/台。次いで鹿児島県4・4人/台、鳥取県4・5人/台、徳島県4・5人/台。昨年と比較して伸び率が多いのは、佐賀県に次いで滋賀県、東京都。
教育用コンピュータの台数は全体で192万221台。設置台数で見ると、小・中学校では普通教室の設置が増えている。小学校では全普通教室数の37・1%、中学校では24・0%、高校では18・5%の普通教室に設置されている。
タブレット型PCの台数は小学校で約8万3千台、中学校で約3万9千台、高等学校で約2万5千台と倍増した。
教育用PCのOSで最多はWindows7の61%。XPがまだ6・7%を占めている。
MacOS及びiOSは2・2%。特別支援学校では17・6%と他校種よりも高い。Androidは0・5%。
校務支援システム
校務支援システムの整備状況は、小中学校ともに8割以上、高等学校は9割以上。教育委員会による一括整備が多いのは小中学校でいずれも8割前後。一方、高等学校では65・0%で、学校単独整備あるいは併用整備の割合が増える。
校務支援システムを整備している学校のうち「統合型」(※1)は、小中学校で5割弱。高等学校では6割弱と、小中・高の割合が逆転。
校務支援システムの整備率100%の大分県、佐賀県、山口県だが、そのうち「統合型」はそれぞれ61・3%、46・1%、30・3%と整備内容に違いがある。東京都は整備率81・2%で、そのうち統合型82・2%と「統合型」の整備が多い。愛知県や神奈川県も「統合型」が高い傾向だ。北海道は整備率60・0%とそれほど高くはないが統合型はそのうち59・8%を占めており、自治体規模により整備内容に特徴がある。
校務支援システムの活用用途については、校務文書に関する業務(※2)を導入しているのは全体で86・9%。教職員間の情報共有(※3)は全体で90・4%。「家庭や地域への情報発信」(※4)は55%。
校務支援システムの運営形態で、クラウドコンピューティングを活用している学校は、校務支援システムを整備している学校のうち36・8%。そのうち33・8%がプライベートクラウドだ。
校務支援システムのネットワークの構築主体は、市区町村教育委員会が最も多く70・0%。市区町村部局は13・6%。今後は市区町村部局や都道府県知事部局による構築が増えていく可能性がある。
教員への電子メールアドレス付与については、高等学校では9割を超えているが小学校及び中学校とも55%前後と伸びていない。
(※1)教務系(成績処理、出欠管理、時数等)・保健系(健康診断票、保健室管理等)、指導要録等の学籍関係、学校事務系など統合して機能を有しているシステム(※2)通知表や指導要録の作成、学籍・欠席・成績・保健・図書等の管理、進学及び転学に関する事務等(※3)電子メール、電子会議室、電子掲示板、スケジュール共有等のグループウェア機能(※4)保護者や地域住民の学校への理解を図るために行う情報発信
デジタル教科書
デジタル教科書の整備率は、小学校43・4%、中学校46・0%と全国的に継続して伸張傾向にある。最多は佐賀県の96・1%。次いで沖縄県68・1%、福井県67・2%、石川県65・9%。
校種別で見ると、小学校では佐賀県96・5%、次いで沖縄県86・2%、石川県74・0%。
中学校では佐賀県100%、次いで石川県85・4%、福井県83・6%と続く。
特別支援学校では、京都府39・1%が最多。次いで佐賀県の33・3%。
高等学校は全体平均が7・6%だが佐賀県は100%。
電子黒板
電子黒板を整備している学校は全体で77・9%。最多は小学校84・2%。最少は高等学校48・2%。うち一体型電子黒板による整備は60・1%。
1校あたりの電子黒板の整備台数が最も多いのは11・9台/校の佐賀県。次いで5・6台の沖縄県、5・5台の東京都、4・5台の岐阜県。
ネット回線
インターネット接続回線の速度については、インターネットに接続している学校のうち100Mbps以上である割合は30・4%。多くが30〜100Mbps未満だ。
無線LAN
無線LANの設置は、普通教室では小中学校とも3割前後であった。
体育館の設置が45%前後と高い。
高等学校で無線LANの設置率が最も高いのは普通教室の15・6%。
教員研修
平成26年度中にICT活用指導力の各項目に関する研修を受講した教員は、全体で30万3258人・34・7%と昨年度31・0%よりも増えているものの、受講していない教員は、57万1374人と圧倒的に多い。最高は佐賀県の96・4%。
校種別で見ると、小学校教員の参加率が高い。
小学校で42・6%、中学校で31・6%、高等学校で21・4%、特別支援学校で33・8%となっている。
参加した研修の実施主体で最も多いのが「学校」で、64・8%。特別支援学校は77・3%と実施率が高い。
市区町村が主体となった研修への参加率は小中学校ともに21%。今後は、教育委員会実施の研修への参加の増加が望まれる。
教員のICT活用指導力
大項目A「教材研究や評価などにICTを活用できる教員」は、全ての県において7割を超えており、43道府県が8割を超えている。小学校で8割を超えているのは41道府県、中学校では27道府県。
大項目B「授業中にICTを活用して指導することができる」が85%を超えているのは、佐賀県、岡山県、徳島県、愛媛県の4県だが、小学校で85%以上の県は8県と増える(佐賀県、岡山県、徳島県、富山県、三重県、沖縄県、愛媛県)。中学校では佐賀県のみ。
大項目C「児童生徒のICT活用を指導する能力」が8割を超えているのは、岡山県、佐賀県、愛媛県、徳島県。60%未満は、愛知県、東京都、静岡県、滋賀県、宮崎県、鳥取県、神奈川県、奈良県の8県。
校種別では、小学校で8割を超えたのが6県(佐賀県、岡山県、高知県、徳島県、愛媛県、三重県)。中学校で8割を超えた県はない。
大項目D「情報モラル教育の指導」については、45都道府県が7割を超えており、小学校においては全都道府県が7割を超えている。中学校で7割を超えているのは39都道府県だ。
大項目E「校務にICTを活用する能力」では19府県が8割を、46都道府県が7割を超えている。なお「大項目A」「大項目B」では佐賀県が、「大項目C」「大項目D」「大項目E]では岡山県がトップ。
【2015年10月5日】