荒川区立南千住第二中学校(齊藤進校長・東京都)は「総合的な学習」を中心に「学級活動」なども活用して3年間を通した地域学習に取り組んでいる。7月3日、南千住地域の史跡などについて3年生が調べたことを1年生に説明する学習活動が行われた。今回は初の試みとして、荒川区が開発した南千住地域の資料や写真、動画をAR(=Augmented Reality・拡張現実)技術により訪問先などで視聴できる地域教材アプリ「マチアルキ」をタブレットPCで活用した。
生徒作品の大行灯「大ひごい」の前で江戸時代に 建設された千住大橋の妖怪縁起「大ひごい」伝説 を説明する3年生 |
南千住20か所にAR教材を仕掛け
南千住地区には、ねずみ小僧の墓がある回向院や羊毛工業発祥の地・千住製絨所跡など史跡が多数あり、3年生はそれぞれの史跡について縁起や言い伝え、歴史やエピソードなどをグループで学習。その成果をタブレットPCなどで1年生に説明した。本来はまち歩きをする1年生を現地で3年生が待機、説明する予定であったが、この日はあいにくの大雨で、急遽校内で行われた。
教室や特別教室など校内の各所に3年生が待機して1年生が自由な順番で回り、3年生の説明を受けた後「MSJシール」をもらいシートに貼っていく。「MSJ」とは「南千住」の略だ。
説明役の3年生は、1年生に興味を持ってもらえるよう、史跡の縁起をストーリー仕立てにしたり、その地区に関わる同校教員の少年時代の思い出話を柱にしたり、クイズ形式にしたりと様々な工夫を凝らしている。
1年生は「骨がそのまま埋められていたと聞いて驚いた(浄閑寺)」、「歯を投げると良いことがあるという縁起の説明が上手かった(日枝神社)」「吉田松陰が牢屋で一生を終えた話が心に残った(回向院)」と話す。「マチアルキ」については「東京メトロ日比谷線車両のパンタグラフを整備・点検している動画(千住検車区)や明治時代の地域の写真(三ノ輪橋)が面白かった」、「今日の学習のまとめをするときにもう一度見直す」と語った。古い時代の写真を拡大して観察する様子も見られた。
プレゼンにクイズを盛り込む工夫も |
看板にタブレットPCをかざすと昔の写真や資料 などが起動してその場で視聴できる |
3年生は「最初は緊張したが何グループも説明しているうちに、反応を見ながら話し方を変えることができるようになった」と、1年生に説明する行為を繰り返すことで伝える力を育むことにも役立っているようだ。
荒川区では全中学校に1人1台の学習者用タブレットPCを配備しており、3年生はタブレットPCを説明のフォローとして、1年生は記録用として活用する様子が見られた。この活動の後、生徒は「荒川区立荒川ふるさと文化館」へ行き「あらかわの伝統技術展」を見学した。
マチアルキをインストールしたPCを、「三ノ輪橋」「千住検車区」「千住大橋」など南千住地区の看板や記念物、史跡などにかざすと、関連する古い資料や写真、動画をその場で見ることができる。
これらのコンテンツは、同校の齊藤進校長も作問に携わっている「歩いて学ぼう南千住検定」を元に制作されたもの。この検定は、南千住に関わる史跡や資料などを中心に出題され、98点以上は「MSJマイスター」に認定され、MSJバッジを獲得できる。
今では全国から受検者が訪れるが、もとは同校内のみで行っていた「歩いて学ぼう南千住検定」。この内容を、東京書籍が「教科書AR」のノウハウを活用して地域教材アプリ「マチアルキ」を制作。今回は南千住地区20か所でARコンテンツを制作し、それを全て視聴すると、タブレットPC上で「MSJバッジ」が獲得できる仕組みにした。
【2015年8月3日】