総務省・教育クラウドと学習者用端末活用<イスタンブル日本人学校>

海外でも迅速に教材を入手

イスタンブル日本人学校
新しく「情報の分類」に挑戦。
教え合うシーンもみられる

使いやすい教材でリテラシーを向上

帰国時の学習接続を円滑に 児童のICT活用をスムーズにスタート

トルコにあるイスタンブル日本人学校は、総務省「先導的教育システム実証事業」(以下、同事業)における海外で唯一の検証協力校だ。同事業で構築した学習・教育クラウド・プラットフォーム(以下、教育クラウド)を同校ではどのように活用しているのか。門脇興次校長に聞いた。

同校には現在、小学校1年から中学校3年まで児童生徒87名が在籍している。

門脇校長が赴任した当時、PCの入れ替えが必要であった。そこで2014年に児童生徒用ノートPC15台、教員用iPad8台を整備。次段階として教材ソフトの整備を進めている時期に、同事業への参加を決めた。

教育クラウドでは活用できるコンテンツを10数種提供している。現在同校が活用しているのは、PCやタブレットを活用する際のスキルアップを図る学習用アプリ「ポケタッチ」、ドリル学習「ラインズ e ライブラリLITE」、調べ学習用「ニューワイド学習百科事典」だ。

教育クラウドで活用しやすく

タイピング練習 グルーピング練習
タイピング・スキル(左)やグルーピング(右)
などを楽しみながら身につける

田んぼ、稲、米。日本人学校には海外で生まれ、これらを見たことがない児童もいる。浮き草やメダカなど日本の教科書にある教材の入手も困難だ。和太鼓を日本から購入した際には税関から許可が下りるまで時間がかかった。その間は保管料もかかり、時には罰金も生じるなど、海外での教材入手には様々な困難がつきまとう。

本事業では、教育クラウドの教材コンテンツをブラウザ上で活用できるため、インストール作業は不要、さらにそれまで生じていた、購入・発注から入手まで数か月かかるというタイムラグがなくなり、現物が入手できなくても授業を展開しやすくなったという。

小学校での活用度1番は「ポケタッチ」

中でも「ポケタッチ」は、同事業において小学校で最も活用率が高い(4月末現在)。これは、「ポケットモンスター」が登場し、楽しく、PCやタブレット端末のスキルの習得から、ローマ字、タイピングスキル、情報分類などの訓練ができる教材アプリだ。同校でも「ポケタッチ」は、児童1人ひとりでの活用が多いこともあり、ノートPC導入時や年度当初の活用率が特に高い。

「最初に何分間取り組むかを設定でき、課題をクリアするとバッジを獲得できるなど、モチベーションアップに役立つ仕掛けが豊富。情報モラル教材も盛り込まれており、インプットとアウトプットのバランスも良い」と話す。「使い方特訓」では、PCかタブレット端末かを選択できるので、どちらも活用できるようになる。

キーボードのホームポジションは訓練しなければ身につかないもの。トレーニングは必須だ。同校では英語は小学校1年から取り組んでいるが、「ポケタッチ」のキーボード練習に盛り込まれているローマ字学習を英語の時間で活用。アルファベット学習を効率的に進めることができた。

同校では、学年ごとにノートPCを活用できる日を決めており、毎日のようにどこかの学級で「ポケタッチ」などを活用。現在は週2〜3時間ある学級裁量の時間「イスタンブルタイム」や「国語」、「総合的な学習の時間」での活用が多い。スクールバス通学のため、低学年でも学校に8時半から夕方16時までと滞在時間が長いことから、日本の学校よりも余剰時間が生じるという。

ICT活用で児童の興味関心が高まったことから、教員も積極的に活用し始めている。現在は、教員指導用として導入したiPadを活用してこれらの教材を提示して説明する、児童生徒のノートや作品を提示して考えを深める学習などに取り組んでいる。

児童用iPad追加で整備

児童生徒の自由な活用をさらに促進するため、今年度はさらにiPad20台を追加で整備する。教員や児童のICT活用が進んでいるが、現状のノートPC15台では同時間帯に1クラスしか活用できないためだ。日本語キーボードのノートPCは入手が難しく、前回は発注から納品まで約10か月かかったが、ソフトウエアキーボードを活用できる端末ならば、トルコ国内で入手できる。

課題はインターネット環境だ。学校には光回線が届いていないため、ADSLで接続している。無線LANアクセスポイントはフロアに2台設置しているが、児童1人1台で同時に活用すると厳しい状況だ。そこで本年はデータ通信用のポケットWi|Fiを試行的に導入。1教室で何台までスムーズに活用できるかについて検証中だ。

「教育クラウドと『ポケタッチ』の活用で、児童のICT活用をスムーズに始め、スキルをそろえることができた。今後はさらに、家庭での教育クラウド活用も視野に入れた自学自習や調べ学習などを深化させていきたい。本事業に参加できて良かった」。今後も引き続き、日本に戻った際にも円滑に学習に接続できる学習環境づくりに取り組んでいく考えだ。

(©2015 Pokemon.©1995‐2015Nintendo/Creatures Inc./ GAME FREAK inc.)

【2015年7月6日】

 

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