産学連携でタブレット端末と学力向上効果を検証<福生市>

”つまずきポイント”細かく設定して分析

タブレット端末
目標時間や目標ページを設定。目標を達成する
と賞賛のメッセージも。単元を終了するとメダ
ルを獲得できる

福生市教育委員会(東京都)は、慶応義塾大学、凸版印刷と産学連携で「家庭学習におけるタブレット端末活用と学力向上効果」について実証研究を行う。小学校3年生の算数で、第1期(1学期)は3校、第2期(10月〜)は1校で実施予定だ。6月19日、福生第五小学校(中野和人校長)の朝学習と算数の授業を取材した。

本実証では、タブレット端末(iPad)を児童が家庭に持ち帰って算数のドリル学習に取り組み、学力が上がる仕組みとその効果を検証するもの。この算数ドリル教材は、東京書籍の教科書をベースにしたドリル問題を元に児童のやる気をアップする仕組みを盛り込んだ「やるKey」実証研究版だ。

教科書に掲載されている問題文のつまずきのポイントをきめ細かく設定しており、段階に沿ってドリル問題に反映。1単元で約570問の用意がある。

教員は職員室などで、自宅学習している児童がそれぞれ何ページ、何分間取り組んだのか、満点が多い問題はどこかなどを確認できる。頑張っている児童、フォローが必要な児童、強化が必要な学習項目などを確認できるので、児童への適切な声かけや、迅速な学習フォローができる。

目標とする時間や進度を個別に設定

自動採点
瞬時に自動採点かかった
時間や正答数、メッセー
ジが表示される

朝学習の時間になると、3年1組の児童はタブレット端末にログインして目標時間と目標点数、目標進度(何ページ取り組むか)を設定した。ある児童の目標は「10分間・50ページ・100点」だ。その後、掛け算や割り算などの計算問題や文章題などの確認ドリルとプラスドリルに各自で取り組んだ。授業者の拝原教諭はフォローが必要な児童に個別指導を行っている。

問題をやり終えて「解答」ボタンを押せばすぐに自動採点されて正誤がわかる。その際には「その調子」「3の段が少し苦手だね、見直してみよう」などのコメントが出る。誤答した場合はそのつまずきを分析してそれを解消する「フォロー問題」が提供される。

同教室には校内LANがないこともありセルラーモデルでの検証だが、タブレット端末の動きはスムーズだ。
朝学習の10分間を終えた後、児童はすぐに各自ログアウト。「何ページできた?」「57ページ」「すごいね!」と会話が聞こえてくる。

その後、タブレットを机上に置いたまま朝の会に進む。その最中にタブレット端末を触る児童は1人もいない。学習規律の整ったクラスであるということがわかる。

得点率が低い問題は授業で

「家庭学習で満点を取る人が少ない問題はどれだと思う?」

拝原教諭は、児童の家庭学習データ一覧からわかる「満点を取る児童が少ない問題」をピックアップ。本時の課題とした。

それは複数の計算式が必要な文章題で、「なぜ間違えやすいのか」を児童に考えさせてから本時の目標「問題をよく読んで正しく式を表す」を示した。おはじきなども使って解き方を個別で考え、2人一組で説明し合い、全体で発表して重要事項を押さえた後、再度タブレット端末によるドリル学習で「複数の計算式が必要な文章題」のプラス問題に取り組んだ。

家庭学習を可視化自学自習を促す

越孝洋教育長は本実証について、「家庭学習の状況を可視化できる点が教員ニーズに合致する。家庭における学習の取組は学力に大きな影響を与える。自学自習を促す仕組みとして検証していく」と話した。本成果を踏まえ「福生市立学校の学力向上策」「福生市学校ICT推進計画」を策定する考えだ。中室牧子准教授(慶応義塾大学)は「ビッグデータの分析から定量的に学力向上効果を実証し、各自治体や学校の教育予算確保につながれば」と語った。

稲垣忠准教授(東北学院大学)は「自分で目標を設定できる点、単元内での自由進度が可能な点が良い。自動採点や児童個別データを一覧できることで、机間指導の仕組みが変わり、教員が個に寄り添う場面を多く設定できる。ドリル学習は基礎基本の定着が目的とされているが、セルフコントロール力の育成や意欲向上効果は、21世紀型スキルにつながる」とコメントした。

【2015年7月6日】

 

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