第2回「デジタル教科書」の位置づけに関する検討会議<教科書協会が提言>

小学校・指導者用は43種 学習者用は28種を発行

「デジタル教科書」の位置づけに関する第2回検討会議が6月30日に開催され、一般社団法人教科書協会・情報化専門委員会が指導者用デジタル教科書と学習者用デジタル教科書についての現状を報告・提言した。

一斉指導型スタイルをベースに開発された「指導者用デジタル教科書」は、小学校、中学校ともに普及率が4割を越えており、教科書準拠教材として現場に定着しつつある教材となっている。平成23〜26年年度版小学校の指導者用デジタル教科書は32種であったが平成27〜31年度版は43種と、今回の改訂で発行種目が90%に増加した。最も多い教科が書写・算数・理科で、各6種。国語・生活は各5種。社会・保健は各4種発行されているという。中学校の指導者用デジタル教科書は、平成24〜27年度版は41種と約70・7%が発行されており、最も発行が多い教科は数学の7種。次いで英語の6種。

一方、学習者用デジタル教科書は、学びのイノベーション事業に向けた開発からスタートしたもの。一斉学習に加え、個別学習や協働学習といった多様な授業スタイルと1人1台の端末環境を想定されている。

こちらの発行は今年度より始まったばかりで、現在28種・58%が発行されており、教科書の一部や指導者用の一部であるなどその発行形態は様々だ。ただし特別支援を想定したリフロー等の機能は概ね活用できる段階にあるという。

教科書協会では「学習者用デジタル教科書」は次期学習指導要領が目指す「主体的な学び」実現のために重要な情報活用型のツールであり、「教科書のデジタル化」においては、紙媒体を基本にした著作権法の一部改正や、掲載保証金制度の適用を検討すべきであると提言。さらに、初等中等教育では無償提供されている現在の教科書制度を前提とした場合には、どこまでデジタル化できるのかについて、具体的に検討すべきであると述べた。

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学びのイノベーション等で活用されてきた検証用「学習者用デジタル教科書」の活用経験がある教員は「リッチなコンテンツで学びが広がる」「新しい学力の育成に効果的」と報告するが、初等中等教育において教科書が無償提供であること、教科書予算がこれまでと同様であるという前提であれば、今後提供されるかもしれない「検定デジタル教科書」が、現在の指導者用デジタル教科書のような「リッチなコンテンツ」になるとは限らない。

もし紙との併用が原則となれば予算確保の問題でその可能性は一層強まる。

「現在の制度を前提としてどこまで現在の教科書をデジタル化できるのか」の検討になるのか、リッチなコンテンツを搭載した現在のデジタル教科書(教材)を検定対象とする「現在の制度を越える」ものになるのか。これまで通り教科書ビューアに表示される紙面が検定対象となり、それぞれの教科書と連携する動画やシミュレーションなどがデジタル教材として別売となる、という可能性もありそうだ。

【2015年7月6日】

 

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