3月13日、文部科学省は「ICTを活用した教育の推進に資する実証事業」成果発表会を行った。当日は、3つのワーキンググループ(以下、WG)「ICTを活用した教育効果の検証方法の開発」、「ICTの活用が最適な指導方法の開発」、「教員のICT活用指導力向上方法の開発」からそれぞれ実証結果が報告された。
教育効果の検証方法
WG「ICTを活用した教育効果の検証方法の開発」(清水康敬座長・東京工業大学監事)では、5教委・4小学校・3中学校の実証地域・校の協力を得て、最適な「教育効果の検証方法」を検討。報告は久世均教授(岐阜女子大学)、山本朋弘指導主事(熊本県教育庁教育政策課)、益川弘如順教授(静岡大学)。
本WGの目的は「教育効果を検証する」ことではなく、より役立つ「教育効果の検証方法」について明確にすることだ。数種類の検証を経、検証方法のポイントについて清水座長は「同じ学級で、活用前後で検証すること。なお客観テスト結果で検証を行う場合は、前後いずれかの検証に不参加の児童生徒はデータから除くこと」と述べた。
検証過程での発見についても報告があった。
「単元の前半のみにICTを活用」「単元の後半のみにICTを活用」2パターンを検証したところ、いずれも「ICTの活用効果」はあるが「単元の前半のみに活用」した場合のほうが、より顕著に効果が表れた。また、「1人1台のタブレットPC活用」では「情報収集力・検索力」に、「タブレットPCと電子黒板」を組み合わせて活用する場合は「児童生徒のプレゼン能力」に伸びが見られた。
顕著にICT活用の効果が見られた学校には、「多様な解が出る場面で活用している」、「どの場面で使うべきかについて学校全体で教材研究に取り組んでいる」などの傾向があったと報告した。
ビデオでは、効果的とは言えない授 業進行をしている場面で中川教授が 「待った」をかける |
WG「ICTの活用が最適な指導方法の開発」では、ICT活用における好事例25授業+4事例の実践ビデオを作成した。「25授業」(小学校13・中学校12・共通1)では、効果を得やすい顕著な授業デザインを収録して解説している。追加の「4事例」は、「ICTを活用していて陥りがちな効果的であるとはいえない授業」事例だ。授業ビデオの中途で中川一史教授(放送大学)が「待った」をかけ、授業が中断するので、校内研修などで「授業のどこに問題があったのか」について考える時間を確保、その後の解説ビデオを見て理解を深めやすいように構成した。
WG「ICT活用指導力向上方法の開発」では、ICT活用指導力向上を目指す教員研修として10のモジュールを設計。育成したい能力を「校内マネジメント力」「ICT授業設計力」「ICT活用力」などに分け、デモ授業や教育の情報化の基礎知識、授業設計のポイント、ワークショップなど、各校の実態や目的に添う研修が展開できるようにした。本WGの成果物は冊子化・電子化して研修の手引きとして提供する。
【2015年4月6日】