【特集】タブレット端末・PCの教育活用
協働学習で児童生徒が活用<横浜市小学校情報・視聴覚研究会>

手書き機能を強化した大画面タブレットPCを活用

12月3日、横浜市で一斉授業研究会が開催され、横浜市立港北小学校(藤村幸秀校長)と同・西富岡小学校(小川伸一校長)では横浜市小学校情報・視聴覚教育研究会(以下、情視研)による公開授業研究会「ICTを活用して、子供達のコミュニケーション力アップ」が開催された。情視研では、思考ツールやタブレット端末・PCを活用した授業デザインについて研究を進めており、「授業デザイン部会」と「スキルアップ部会」において、昨年7月からWindowsタブレット「dynabook V714」(東芝)の活用をスタート。手書き機能を強化した大画面のタブレットPCだ。港北小学校では2人1台・計22台、西富岡小学校では1人1台・計30台の環境で検証している。

"思考の可視化"で質を高める "1人1台""2人1台"を検証

アップとルーズで効果的に伝える 横浜市立港北小学校

横浜市立港北小学校
話し合いの結果、修正した点を発
表した

横浜市立港北小学校4年2組(近藤睦教諭)では、「授業デザイン部会」による公開授業が行われた。児童は、養護教諭や学校事務職員、特別支援学校教諭、学校司書、店長や会社員、クリエイターなど、班ごとに身近で、これまでの学習で関わりをもったことがある職業の方に取材して「職業デジタル仕事リーフレット」の素案を各自タブレットPCで作成している。リーフレット作成のポイントは、職業の特徴とともに、その職業に携わる方の「心の火」‐どんな思いを抱いてその仕事に携わっているのか‐を伝えること。それを、国語教材「アップとルーズで伝える」(中谷日出作)での学び‐効果的な写真の選択と対応する文章作り‐を元に、写真と文章で伝える。

ある児童は、消防士のワッペンの「アップ」写真で消防士の心の火「1人でも多くの人の命を救いたい」思いを伝え、通信司令室と訓練の「ルーズ」写真で「疲れたときほど訓練に真剣に取り組む」思いを伝えていた。菓子職人の心の火を「自身がアレルギーであることから、アレルギーの人でも皆と同じものを食べることができること」と表現した児童もいる。

話し合いでは、「アップの写真なのに、説明が途中からルーズになっている」「アップとルーズの写真を1枚ずつ使うべき」「この説明ならばこちらの写真のほうがわかりやすい」「順番を変えたほうが良い」など構成に係わるアドバイスや「『平べったい』ではなく『薄い』」と表現したほうが良い」など表現に係わるアドバイスも展開。友達の作品を称賛する声や「相談してよかった」と満足げな声も聞こえる。児童はタブレットPC上で、アドバイスを元にデジタイザーペンを使ってPC画面にタッチしながらリーフレットの順番を変え、使用する写真を差し替えた。文章の変更で文字を打つ際にはキーボードを使う。児童自身で作業内容による使い分けをコントロールできる点はタブレットPCの利点の一つだ。

授業の最後には、「どんなアドバイスを受けてどのようにデジタルリーフレットを変更したのか」について発表。ある児童は「作品のアップの写真を使ってワークショップについて説明していたが、アドバイスをもらい、よりたくさんの作品の写真を使うことで、強く内容が伝わるようになった」と報告した。

■すぐに使える環境で関わり合いの質が変わる 近藤睦教諭

お互いの作品を見せ合い・・・
11.6インチの大画面タブレットPC
でお互いの作品を見せ合い修正案
を考える

デジタルリーフレット作りではタブレットPCを4人に2台使用。1台が画面閲覧用、1台は作業用だ。近藤教諭は「話す・聞く活動で大画面のタブレットPCは、2人に1台でも協働的な活動がしやすい。各自の作品作りや文字を書く活動の場合は手書き機能が活躍しており、1人1台あると良いと感じる」という。「2学期から本格的な使用が始まり、手を伸ばせばすぐに使える環境になったことで、児童の話し合いや関わり合いの質と量が変わった。練り合う活動、話し合う活動が当たり前になり、学びがより深化している姿が学習の随所で見られた。『未来の自分に役立てる』という意識をもち、単元名の表現に取り入れたいと発言し、自分たちの言葉に変えていこうとする姿もあった。学びたい内容が明確になるほど、それらの言葉の意味を深く考えるようになるようだ」

タブレットPCの管理は、席順と紐付けして管理。誰がPCを返却していないかすぐにわかるようにしており、未返却については帰りの会で、クラスのICT係が報告している。もとからあったICT係だが、タブレットPCの導入で活躍の場が広がった。

学級カレンダーでクラス力を高める 横浜市立西富岡小学校

横浜市立西富岡小学校3年2組(藤原直樹教諭)では、情視研「スキルアップ部会」による公開授業が行われた。児童は、日々の学級の成長を共有するために、自分たちが目指すべき姿を学級カレンダー「かがやきの足あと」として春から書き留めている。しかし、藤原教諭は「すべての思いをカレンダーに書き留めきれない。非対面型コミュニケーション能力を伸ばす機会も不足している」と考えていたという。その課題の解決に、1人1台のタブレットPCを活用した。

言葉選びについて考える
適切に伝わる言葉選びについて
考える
デジタイザーペンやキーボードを併用
デジタイザーペンやキーボードを
併用して例文を修正

この日の授業では、自分が発信するメッセージを相手に伝えるにはどのような言葉選びが良いのかについて考えた。藤原教諭が提示した複数の例文を児童のタブレットPCに転送。児童は、その例文テンプレートに直接修正をしていく。キーボードで修正する児童やデジタイザーペンで文字を書いて修正する児童もいる。その後、それぞれの児童が自分のタブレットPCの画面を見ながら、クラス全員で、どの表現を修正すべきかについて指摘し合った。修正した例文は、教員機と電子黒板に提示され、それぞれの児童がどのような変更をしたかを見ることができる。教員はいくつかの修正例を選び、児童にその理由を発表させた。すべての児童にタブレットPCがあるため、個別の活動から全体活動への移行がスムーズだ。

■すべての活動を記録「評価」に結びつける 藤原直樹教諭

「タブレットPCの活用を始めてまだ数か月だが、児童の操作は当初からスムーズ。隣のクラスでも活用したり、校内で活用状況や感想について尋ねられたりなど、関心も高い」と話す。

この日の授業ではタブレット用授業支援アプリの活用が多かったが、日常の教科学習ではこのほか、カメラ機能なども使い、学校紹介のためのプレゼンテーション資料も作成。それぞれの児童がその活動の結果を手書き機能やキーボードを使い分けながら自分のタブレットPCに入力・記録しており校内サーバにデータを蓄積。次の展開時にその記録を振り返り、理解度合いや状況に応じて、展開の方法を修正している。藤原教諭は「すべての児童の足跡を記録して評価に結び付けられる。このような活動は、文部科学省の諮問でもとりあげられたアクティブラーニングの評価手法の一つとして活用できる」と期待している。

安全な無線LAN環境を検証

■横浜市のICT活用

無線ルーター
持ち込みスマホの不正
利用を防ぐ

横浜市では、第2期横浜市教育振興基本計画において「先進的なICT教育の推進」を掲げ、ICT活用の方法や情報モラル・マナーを身に付ける教育の推進、タブレット端末等の学習環境整備に取り組んでいる。

市では現在無線LANが認められていない。無線LANを使用したい場合は、横浜市教育情報ネットワークY・Yネット(横浜市立学校515校を結ぶ学習用ネットワークYOKOHAMA‐YUME‐NETWORK)に接続せずにその他の回線を準備する必要がある。さらに、その他の回線を準備する際には事前に市教委に相談して許諾を得る必要があり、情視研ではこの段階を経て検証を行っている。

■持ち込みスマホのアクセスを制限

情視研の検証では、2校に無線IPS(不正侵入防止)システム「AirTight Spectra Guard Enterprise」も導入。これは、児童の持ち込んだスマートフォンなどが校内に設置した無線LANに接続して不正利用を防ぐことができる仕組みだ。不正侵入防止システムでは、校内設置アクセスポイントと許可端末のみの通信を実現する。さらに不正アクセスなどの脅威も検出・防御・分析できる。既存ネットワークにも追加できるが、新規で無線LANを構築する場合は、アクセスポイントと監視センサー1台で一括管理・運用できる。

【問合せ】東芝情報機器株式会社〓bunkyo‐1p1@toshiba‐tie.co.jp
【URL】www.toshiba‐tie.co.jp

【2015年2月2日】

【特集】タブレット端末・PCの教育活用<学校ICT化推進事業 東京都墨田区>へ

関連記事

↑pagetop