教育委員会対象セミナー・東京 ICT機器の整備計画/校務の情報化
12月9日、東京都内で「第20回教育委員会対象セミナー」が開催され、全国から教育関係者が参集した。この日の講演内容を抄録する。次回の教育委員会セミナーは1月29日福岡で開催される。詳細=http://www.kknews.co.jp/semi/150129.html
大阪市教育委員会 山本圭作課長 |
山本圭作課長(大阪市教育委員会)は平成25年度の試験導入校を中心に8月に発表した事業検証について報告した。
大阪市では平成24年度末にプライベートクラウドを構築して、校務支援用端末を整備、平成25年度より小中高特支458全校でグループウェアとコミュニケーションサービスをリリースし、小中試験導入校31校で校務支援システムを稼働した。校務の情報化の目標は教員が児童・生徒と向き合う時間を増やすことにある。そこで「重要業績評価指標=KPI」として「年間100時間の創出」と数値目標を掲げ、学校経営の効率化や学校教育の質の向上、教育内容の活性化を図ることとした。
平成25年4月から全校でスタートしたが、事業をPDCAサイクルにおとしながら展開。システムの稼働管理を行い、毎月の定例会議では、数値実績による稼働状況をチェックし、市職員、事業者、指導主事で事業向上に向けて改善提案を討議した。稼働状況の低い学校は、電話や訪問でサポートした。
本事業のサービスマネジメントの特長は、全教職員・教育委員会1万6000人が24時間365日のサービスを利用できる点だ。1万2300台の校務用端末において月5〜6000万アクセスのインターネット利用があり、ウイルス感染等セキュリティ管理も万全に行っている。サービスに関してはSLA(サービスレベルの基準値)として、システムの計画停止時間は月10時間以内とし、電話によるサポートは8時〜18時まで97%の着信率、問題解決率は24時間以内で95%、障害復旧時間も4時間以内とした。それとともに、総合研修や各校での巡回研修も行った。統合コールセンターの設置により電話・FAX・メール等で対応。リモートサービスによる技術サポートも行っている。
校務支援システムの担当者CIOと校務情報セキュリティ担当者を全校に設置。CIOは年度当初にシステムを設定し、学年単位で分担して設定作業を行う際のリーダー役で、校内の活用促進のリーダーとして管理職を支援する。内製化することによりICT支援員にかかるコストを削減した。
試験導入校では、管理職は100%、教員は97%が校務支援サービスを「毎日」利用している。自宅などインターネット経由で校務を行うことができるテレワークサービスの導入で、USBメモリによる情報漏えいリスクも低減した。
試験導入校31校の全教職員を対象に平成25年から26年までに計5回のアンケート調査を実施。「校務の負担感」「システム利用前の業務に係わる時間」「システム利用後1学期・2学期・3学期時点」などの効果を検証。それによると、1クラス1か月あたり55分かかっていた出席簿は、3学期には、平均約30分間削減した。通知表は児童生徒一人あたり平均25・3分間短縮。週案は、1週間で37分、指導要録様式1は児童生徒1人あたり約27分間、様式2は同様に約44分間短縮した。給食日誌は97%が、テレワークについては約75%が「効率化になっている」と回答している。
合計すると、教頭は年あたり136・3時間、クラス担任は168・1時間、日にそれぞれ教頭34分・担任42分もの削減効果が図られた。これらにより創出された時間について、教員は、教材研究や放課後の補習、部活動の時間にあてたいと回答。「メール」「連絡掲示板」「会議室」「書庫」などコミュニケーションツールの活用により、情報展開・共有が図りやすくなり、職員朝礼や職員会議の回数減、会議時間の短縮につながった。
また、マスタデータを修正すれば関係システム全てに反映される『ワンソース・ワンマスタ運用』によって転記ミスや出欠日数の検算などにかける時間も効率化。校長の承認印も平成27年度から電子化の予定だ。
学校HPの更新も簡便になり、1か月のアクセス総数が1万5000件以上の学校もある。
現在、市では全校458校1万6600人に同システムの利用の定着を深めるとともに、教育版熟議サイト「ご意見板」を新設するなど事務負担軽減や情報発信力の強化を進めていく。(講師‖大阪市教育委員会事務局学校経営管理センター・山本圭作課長)
【第20回教育委員会対象セミナー・東京:2014年12月9日】
【2015年1月1日】
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