2009年から遠隔会議システムを活用。多拠点でも双方向でやりとりができ、集中講義や他大学との遠隔講義を行っている。 |
国立大学法人東京農工大学は、府中市に本部を置き、農学部と工学部の2学部および大学院から構成される。
1874年(明治7年)の設立以来、140年の歴史を持っている。
同大学では、従来から衛星通信を利用し、他の国立大学との遠隔講義を実施していた。しかし、機器が老朽化したため、2009年、現在のビデオ会議システムを構築した。
北海道から沖縄まで全国の国立大学18校を、高品位の映像と音声で結び、年に2回、集中講義を実施しているほか、大学院においても他大学との遠隔講義を行っている。
相手側に一般的なテレビ会議システムがあれば接続が可能なため、姉妹校との交流、企業との共同研究、学会や講演会といった利用も数多い。
さらに、東京農工大学のキャンパスは府中市と小金井市の2か所にあり離れているため、キャンパス間の会議などでも利用されている。
その他、入学希望者向けオープンキャンパスや新入生オリエンテーション、講演会などで一時的に多くの人数を収容する必要がある場合、近くの教室を結びサブ会場として利用することもある。
遠隔講義などでシステムを利用したいときは、場所と日時をネット上から入力するだけで予約が完了する。
利用当日は特に操作は必要なく、予約時間になると自動的にシステムが作動する。
そして、予約時間が終了すると、システムは自動的にシャットダウンする。
「1日あたり2件以上の講義や会議がネットからの予約で利用されています。他のテレビ会議システムとも接続可能で、その場合は予約をしないで利用されることも少なくないため、実際の稼働状況はもっと多いことになります」(東京農工大学総合情報メディアセンター講師櫻田武嗣氏)
システムが利用可能な場所を、同大学では「拠点」と呼び、全国の国立大学18校に合計47か所設置されている。
そのうち東京農工大学にはもっとも多い23の拠点がある。
各拠点には、講師用および受講生用のカメラが2つ設置されており、利用者は簡単な操作でカメラを切り替えることができる。
コンピュータ映像の入力なども、タッチパネルで直感的に操作が可能だ。
システムはポリコム社の製品を採用した。
多数の拠点を接続するための装置である新型のMCU(Multi point Control Unit)の導入は、同大学によれば世界で初。
従来の衛星通信を利用した方式では、少なくとも1週間前には予約しなくてはいけなかった。
しかも、利用料金が都度かかる上に、双方向で会話できるのは4拠点までといった制約があった。新システムでは、これらの不便が解消し、利用者からは好評だ。
全拠点が双方向でやり取りできるため、講義を担当する教員からは「受講中の学生の様子が分かり、問いかけをした際の反応が見られるのがいい」という意見が寄せられている。
「システムを自動化したことなどで、利用者は講義や会議に集中できるようになり、活用が進んだことが大きな成果です。テレビ会議システム利用のハードルを下げることができました」(櫻田氏)
今後はモバイル環境を整備し、屋外にある実習現場からの遠隔講義などを行いたいとしている。
【2015年1月1日】
関連記事