21世紀の学びに求められる授業デザインと環境デザイン<日本デジタル教科書学会>

11月23日、日本デジタル教科書学会の研究会「21世紀の学び、3本の矢の提案in東京」が開催された。

2回目となる今回は「授業デザイン編」「環境デザイン編」という2つのパネルディカッションが展開された。

これからの時代のICTを活用した授業や環境整備に関する提案や問題提起に、全国から集まった参加者は熱心に耳を傾けた。

中橋雄教授(武蔵大学)は講演で「既存型学力と新しい学力のどちらを目指すのか、再考する必要がある。デジタル教科書が教育に活かされるには、学力観、学習環境、授業デザイン、教師の授業力などを改めて考えることが大切だ」と伝えた。

パネルディカッション「授業デザイン編」では、広瀬一弥教諭(亀岡市立南つつじケ丘小学校)が授業実践を紹介。

研究会「三本の矢」
研究会「三本の矢」は日本デジタル教科書学会の理事3名(山田教諭、広瀬教諭、内田教諭)により発足

「発表する直前にプレゼン資料を手直しする児童もいるなど、デジタルでは制作物のブラッシュアップが簡単にできる。このメリットを活かし、作りっぱなしでは終わらず、情報発信の意欲と責任を持たせたい」と語った。

内田明教諭(佐賀市立若楠小学校)は、授業デザインの観点から現場の実情を紹介。

「どのような学びの場を子供達に提供していくか、を念頭に授業デザインを考えている。

協働的な学習では、児童がタブレット端末を使うことを前提とするのではなく、目的から逆算して活動内容を決めていく。

ツールの活用もその1つ。まずは無理せず、シンプルな活用から始めて」と話した。

コーディネーターの山田秀哉教諭(札幌市立稲穂小学校)は「子供達には、互いの考えを共有しゴールに向かって折り合いをつけ、知的な情報を生み続ける人になってもらいたい。

作ったことで満足せず、自分の考えの不十分さに気づき改善につなげさせる。そこに学びがあり、個から協働へ、また個に戻る」と話した。

事業評価で問い直す

パネルディカッション「環境デザイン編」で田中康平氏((株)ネル・アンド・エム)は「これまでのICT環境整備は、手順が逆だったのではないか」と課題を指摘。

「特に事業評価という視点が欠けている。

整備された環境が授業や学習に貢献しているかについて数値・グラフ化し、関係者で共有する。そこから改善につなげることを提案したい。

どんな人物を育てたいのかといった目標へ到達するための授業デザインや、想定する学習活動を実現するための整備になっていたのかについて常に問い直すことが必要」と語った。

阪上吉宏氏((株)エデュテクノロジー)は「導入を加速させている事例では、現場教員の意見を上手く取り入れている」と海外の事例も交えて提案。

「シカゴ市では教育情報化ビジョンを掲げ、賛同する教員を募って環境を与えた。

国内では淡路市が同様の例だ。従来の授業力向上のツールとしてタブレット端末を活用した取り組みの効果が認められ、全市展開に進んでいる。

最近は海外でも、全体導入の1年前に教師に端末を渡し、活用に馴染んだ後に子供達に対して整備している」と話した。

コーディネーターの林向達准教授(徳島文理大学)は「お互いが良かれと思って実行することがズレていくこともある。

関係者がコミュニケーションを取りながら、環境デザインの課題や解決策を探り、共有していくことが求められている」と話した。

【2014年12月8日】

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