学校の情報発信をチームでサポート<八王子市教育委員会>

八王子市教育委員会

八王子市では全108小中学校(小学校70校、中学校38校)で学校HPによる情報発信を行っている。

同市教育委員会では、様々な部署が連携して学校情報の積極的な発信を支えており、学校評価や災害対策など新しい試みも準備中だ。

学校教育部教育総務課・小林順一課長、同・野田明美課長補佐、同・前田亮主任、学校教育政策課・小俣勇人課長、同・松本眞次専門幹、教育総務課・堀川悟主査に、同市学校HP活性化の経緯や現在の取り組みを聞いた。

八王子市の学校HPは、更新が活発で、閲覧数も多い。

その理由について教育委員会(以下、市教委)では「校長会でも情報発信の重要性についてアピールしており、どの学校でも、情報発信は重要であるという認識を持っている。

発信することに慣れることで少しずつ活用が進み、自然に普及していった」と話す。

学校教育部では「校務支援担当」部署を設置し、学校の校務に係わる全般をサポート。

きめ細かく柔軟な対応を継続して行っている。

かつては各校が個別にHPを作成していたが、スキルのばらつきや担当者の異動などで更新が滞るという課題があったことから、平成20年度、簡易に更新できる統一したシステムとした。

このとき導入したのが、学校CMS(コンテンツマネジメントシステム)「スクールWebアシスト」((株)EDUCOM)だ。

各校のHP移行・更新作業については、ICT支援員がフォロー。教育センターで研修も行った。

■更新しやすい内容から情報発信

平成21年度の完全移行に伴い、「学校長の言葉」「特色ある教育活動」など、各校に「HPに掲載すべき必須情報」を提示。

期限までに情報公開されていない場合は個別に学校に連絡して更新できない課題にきめ細かく対応していった。
給食メニューのアップなど、日常的に更新しやすい内容から始めることで情報発信に慣れる段階を経て、行事の様子など、徐々に情報発信が活発化。それに伴い保護者からの反応や閲覧数が増えていったという。

校務用PCのホーム画面は”学校HP”

校務用PC画面
教育委員会の最新情報も学校HPに反映される

■アクセスの増加でサーバ環境を強化

現在は全小中学校で更新が行われており、中には日に800程度のアクセスがある学校もある。

HPの更新が滞ると保護者から学校に問合せがあるなど、学校HPによる情報発信が浸透した。

全日本小学校ホームページ大賞(2012年で終了)の都道府県優秀校が連続して複数出るほど、活発で個性的な情報発信が広がり、学校の特色作りにも役立っている。

市教委ポータルでは、各学校HPのアクセス数、更新状況べスト10、最近更新した学校リストなども閲覧でき、それらの数字が各学校の情報発信の励みになっている面もあるようだ。

学校と家庭のコミュニケーションツールとして浸透、アクセス数の増加に伴い、市では学校HPを重要な情報発信ツールと位置付け、平成22年度にはサーバを強化した。運動会シーズンに天候不順だったこともあり、学校HPへのアクセスが集中、サーバがハングアップしたことから強化に踏み切ったという。

校務用PC画面2
更新ベスト10や最新の更新状況が
地図上に表示

■市教委と公開情報を連携

学校HPへの情報掲載が増えたこともあり、市教委は学校HPから各校の情報を入手できるようになった。

さらに、市教委HPと学校HPの連携もスタート。

市教委では各種学校情報、統計情報のほか、各校に出張し、学校などの取り組みを写真で伝えるフォトニュースなどもアップしている。

しかし市役所のHPでは階層が深く、情報発信が保護者などに広く行き渡らないことから、各校の学校HPに市教委の更新情報が閲覧できるスペースを用意。

学校HPからも閲覧できるようにした。

市教委の方々
前列左から野田氏、小林課長、前田氏
後列左から堀川氏、小俣課長、松本氏

「更新頻度が高く閲覧数が多い学校HPにおいては、市教委の情報が多くの人の目に触れることになる。

また、更新頻度が低い学校HPでも、週に1回程度は市教委の情報が新しく掲載されることで、更新されているという印象を持つことができる」と、市教委と学校の相乗効果を期待している。

昨年度の機器のリプレイスの際には、校務用PCも更新。

校務用PCのホーム画面を自校の学校HPに設定した。

常に自校のHPを見ることができ、かつ情報発信の状況を意識しやすい仕組みとした。

市内には約2500人の教職員が在籍しているが、同時間帯に一斉にアクセスしても遅延などの問題もなく稼動している。

■災害対策でデータセンター化

災害時を想定した複数の連絡手段確保として、二重三重の対策が求められている。市では、3・11の東日本大震災以降、災害対策も強化した。

震災後、計画停電地区であった市では、学校HPの閲覧ができなくなった。

その反省から、本庁舎にあったサーバとCMS機能を、関東圏、中部圏のデータセンターで二重に管理する環境に移行。地震・災害が起こっても学校HPが閲覧・利用できるように対策を図っている。

合わせて、災害用ページも設置。アクセスが集中してもハングアップしないように写真や画像を除いた災害用ページを用意して、災害時にはトップページに切り替えられるようにした。

今年の防災週間には、防災訓練の一環で「学校HPのトップページを災害用ページに切り替えて使えるようにする」設定を各校で実施。

災害対策機能の周知と活用促進が目的だ。

その際も、災害用ページに切り替わっていない学校に連絡し、切り替えができるように支援した。

また、複数の連絡手段の使用を想定して「災害用伝言ダイヤル」訓練も併せて実施した。

防災訓練後、日本列島を襲った台風18号、19号の際には早速、休校情報などで災害用ページを活用する学校が十数校見られたという。

■学校評価でアンケート機能も

今後の新しい取り組みとして、学校評価のために「Webアンケート機能」の活用を検証中だ。

学校評価は年2回の自己評価を義務付けており、さらに児童生徒対象、保護者対象それぞれにアンケートを行っている。

集計して分析、表やグラフにまとめ、HPに公開するまでには多くの時間が必要だ。

そこで市教委では、HP上でアンケートの実施・回答・自動集計できるスクールWebアシストの「アンケート機能」活用検証に着手。

実施に先立ち、校内で児童生徒を対象にHP上でアンケートを行うなどして、教職員がその仕組みや活用に慣れる機会を設けるなど、準備を進めており、来年度から各校で活用を進める考えだ。

実現すれば、これまで以上に調査結果や経年変化の分析が迅速に公開できるようになる。

さらに、地域に開かれた学校支援としても、アンケート機能の活用を計画。

八王子市が力を入れているコミュニティスクール運営のためには、地域の声を広く集め協力を募る必要がある。

紙によるアンケート配布はコストもかかり、回収も容易ではないことから、HP上でのアンケート実施を検討している。

市教委は設計のみ、運用は学校任せという自治体もある中、八王子市のきめ細かい対応や柔軟な発想はどこから生まれてくるのか。

「CMSの様々な機能について担当企業との情報交換や、学校とのコミュニケーションの中で、こんなことをしてみてはどうかというアイデアが生まれてくる。校務支援担当として、学校の不得意な部分を今後もフォローしていきたい」と話す。

市では今年度中には「教育の情報化推進プラン」を策定する予定で、今後一層のICT活用が期待される。

【2014年12月8日】

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