反転授業とデジタル教材<富谷町立東向陽台小学校>

デジタル教科書で反転授業 主体的に考え理解深める<富谷町立東向陽台小学校>

富谷町(宮城県)では国語・書写・社会・算数・理科・家庭科でデジタル教科書を活用している。

富谷町立東向陽台小学校(麻生川敦校長)の佐藤靖泰教諭は、デジタル教科書を活用した「反転授業」を東北学院大学と協同研究中で、その実践は3年目。本年は5年生算数で実践している反転授業の様子を取材した。

今年度、佐藤教諭は「比べ方を考えよう 百分率とグラフ」で反転授業に取り組んだ。指導時数11時間中、導入1時間、反転授業8時間、習熟のための授業を2時間行う計画だ。

計算式を比べる
消費税が加わった値段の計算式を比べる

佐藤教諭は、「250円の30%びきのねだん」を求める問題について「みほさん」「たくみさん」2人の求め方について、どちらの方法が分かりやすかったかを聞くことで、反転授業教材を家庭で視聴しているかどうかを確認した。この日はこの考え方を踏まえて2つの問題に取り組む。

最初の問題は「900円の商品に消費税を加えた値段」を求める。問題文をデジタル教科書からピックアップして電子黒板に提示し、事前に学んだどちらの方法でやっても良いこととして、各自タブレットで考え方や式を考える。端末への書き込みは、指やペンなど、様々。

ノートで考えてからタブレットに清書する児童もいる。

その後、隣同士で解き方や式を見せ合い、何がどう異なるのかについて確認。

何名かの考え方を電子黒板で提示して、考え方を分類し、それぞれについて児童が説明した。

次は、佐藤教諭が「6年間で最も難しい箇所では」と話す問題だ。

「重さが20%増えて90gになったお菓子」について、中身が増える前の重さを求める。

最初は各自で考えるので、教室は静か。

意見交換が始まると次第に、教室のあちこちから「わからない」「わかった」「こうしなくちゃ」と聞こえてくる。

各班の活動を一通り見てまわった佐藤教諭は「7班と8班はあることに気づいて悩んでいます。1〜6班は、それに気づかず同じ解答になって安心しています」と揺さぶった。

「答えは分かった!」という児童の発言が教室をさらに揺さぶる。

検算をすると確かに正解。求めたい数値が「元の値より少ない」ことから「これくらいかな、と見当をつけた数値」が正解であったという数学的センスを発揮した児童も、求め方の説明はできない。

「なんでそうなるの?」と言いながらさらに考える児童、難しくてペンが止まり始める児童に分かれた。

佐藤教諭の誘導もあり、「90gが120%だから、計算するときには1・2になって‐‐」「求めたい数は元の数だから‐」と徐々に正解に近づき始める児童も見られる。

小五「割合」で反転授業 動画教材は平均8分、予習は約20分

 

個別の答えは電子黒板に
個別の考えは電子黒板に提示

授業後の児童のつぶやきから、わかったことの喜び、正解であると信じていた解答が異なることの驚き、頭が痛くなるほど集中して考えていたことなど様々な段階の児童がいることがわかった。

佐藤教諭は今後、「この日の授業でどこまで自分はわかったのか、わからなかったのかについて把握して、習熟の時間に理解を深め定着を図る」と述べる。

転授業によって授業の進度が早まり、習熟のための時間を確保できるようになったからだ。

反転授業の教材は、指導者用デジタル教科書を使い、問題の解説を佐藤教諭が書き込みながら説明、それをそのまま録画できるシステム「ThinkBoard(シンクボード)」(ゼッタリンクス)を使っている。

教材は、単元開始前に全て作成、全て児童のタブレットに格納しておくので、児童は前に戻って見たり、その先を見たりを自由に行える。

動画教材は、昨年度の6年生では5分間程度を目標に作成していたが、今年度は平均8分程度の動画となった。

5年生の算数の学習は新規の内容も少なくなく、より丁寧な解説が必要となったようだ。

児童に聞くと、繰り返し見たり、視聴後ノートにまとめたりする時間を含め、1日に20分前後の予習時間になるようだ。

指導者用デジタル教科書を反転授業用教材として活用することについては、大学との協同研究ということで特別に許諾を得た。

しかし、一般に発行されている教科書・教材を素材として使用する際には、著作権の問題に十分配慮する必要があり、今後このような活用スタイルが普及する上での課題の1つと言える。

反転授業によって「できる児童はさらにできるようになり、苦手な児童は、これまでよりも頑張りが利くようになっている」と話す。

全ての授業を反転授業にする必要はなく、必要な単元で適宜行うことで、全体に良い影響を与えるという。

数値的な評価は、本単元終了後に検証する予定だ。

動画教材で予習しやすく

麻生川敦校長
麻生川敦校長

「復習中心の学習だと、子供は受身になりがち。

しかし、紙教材による予習は、小学生にとって負担が大きい場合もある。

そこに現われたのが、動画教材を活用する反転授業という新しい予習スタイル。

数分間の動画を見るだけで、わからないことがはっきりとし、次の日の授業への構えができ、主体的な活動につながる。

授業を通して次第に理解が進むことで、達成感や充実感も得られるようだ」と反転授業を評価した。


【2014年12月8日】

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