英語インタラクティブフォーラムで4技能を育む<茨城県>

グローバル人材に必要なものは、英語力のみではない。しかし、グローバル人材育成において最も日本人の苦手意識が高い要素が英語によるコミュニケーションである。韓国では国民の要望に応えて1997年から小学校3年生から英語授業をスタート、寄宿制の公立グローバルハイスクールを国内に6校開校するなどグローバル人材の育成に一歩先んじているが、日本では茨城県がロジカルに英会話ができる生徒の育成を目指した「英語インタラクティブフォーラム」を1999年から開催。日常の授業の中でフォーラム形式のグループ英会話トレーニングを積み重ねながら、相手との会話の中で深い内容を英語で話せる生徒の育成を続けている。

16年間継続 英語で5分間の会話
態度、内容、会話への参画度を評価

「英語インタラクティブフォーラム」は、スピーチコンテストと異なり、台本なく相手の語った情報を受けて即興で自分の持っている情報や考えを展開し次の会話へとつなげていく。校内選抜、郡市大会、地区大会を経て県大会に進み、ハイレベルな英会話力のある生徒が表彰される。

高野指導主事
高野指導主事

茨城県義務教育課の高野香保里指導主事は「茨城県では、1985年に国際科学技術博覧会が茨城で行われたのを契機に、スピーチコンテストを継続して行っていた。その取り組みの中で、もっと双方向的な、英語で会話ができるような力を育成しよう、と英語インタラクティブフォーラムを開始し、今年で16回を数える」と語る。
「例えば、Which do you like better,summer or winter ?と聞かれたときに、その季節を好きな理由を相手にきちんとわかるように、説得力ある説明ができる力、ネイティブと話し、海外に出かけたときにも通用する力を求めている」、「今の若者にありがちな『わかんなーい』と、思考を放棄するのではなく、自分を客観的に見つめ直す習慣を思春期から身に付けていくことが大切だと考えている」。

従来の授業の改善も目的の一つだ。

茨城県では、代表の生徒だけをトレーニングするのではなく、学級・学年全体でフォーラムの形式を活用した授業を展開し、それにより代表者を選ぶように繰り返し各校に指導している。その結果、多数の学校で、授業にフォーラム形式の、3〜4人のグループによる会話活動を取り入れている。

大会は、生徒に英会話力向上の意欲を与えるだけではなく、教員に文法・訳読中心の従来の授業改善の具体的目標を示しており、両面から、コミュニケーション能力育成授業定着の励みになっている。

3人が身近なトピックで英会話

英語インタラクティブフォーラムは、提出されたトピックについて、中学生3人が英語で5分間会話する。会話への参画、態度、会話の内容、詳細な意見、説明、英語の正確さ、流暢さ、表現方法などが総合的に評価される。

トピックは、「My favorite time」「Summer or Winter」「Dream」といった中学生にとって身近なテーマ。掲出されたテーマについて、他校の、それまで面識のない生徒同士が英語で5分間話し合う。相手の会話を助け、3人の会話を建設的にリードする能力も求められる。

今年度の県大会は8月22日、つくば市の筑波学院大学で行われた。郡市大会までは事前にトピックが知らされるが、県大会ではその場でトピックが開示される。午前中は予選で、学年別に6教室に分かれ、大会への出場権を得た中学2年生、3年生各36名が3人1組で5分間の会話に挑戦する。グループの組み合わせを変えて、3回戦。教室後方には多数の保護者がわが子の英会話をじっと見守る。左手前方で、審査員の日本人教員とALT計2名がシートに評点を付ける。3回戦の評価の合計点で、午後の決勝出場者が決まる。

生徒は英会話を淀みなく発していく。テンポよく会話が展開し、満足そうな表情を見せる生徒。組み合わせの影響もあってか、会話がうまく展開せず、残念そうな表情の生徒。保護者の中から「すごい。聞き取るのがやっと」という声も聞こえてくる。大会では、上記のA部門のほか、海外滞在経験者などが出場するB部門、高校生部門も実施している。

論理的な英語力育む「手引き」を作成

県では「英語コミュニケーション能力育成事業」の一環として「ロジカル・トーキングの手引」を現在作成中で、来年2月の悉皆研修で趣旨・内容を周知徹底し各中学校に配布予定だ。

手引きは論理的に英語を話す力をつけるための指導資料集。「趣旨」、「指導略案と具体的な指導事例」、「帯活動」などで構成予定。論理的に話す力を育成するのに有効なディベートの事例も収録予定でワークシートも付属する。

また、県、地区、郡市と各段階の審査でできるだけブレのない審査が行われ、各学校に茨城県が目指す「コミュニケーション能力」の内容が伝わるようにフォーラムの評価基準を昨年度新しく改定した。さらに「ジャッジトレーニングDVD」を作成し、審査員の研修を行うとともに、審査員が5分間のグループ会話の映像を見ながら、表現、内容、態度の各観点項目の評価点(1〜5)を練習できるようにしている。

【2014年11月3日】

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