新しい学びの場を提供する―千代田区立九段中等教育学校

PC室をアクティブラーニング教室に 学習者用PC・2種類250台配備
宮正典教諭
田崎丈晴主幹教諭

千代田区立九段中等教育学校(坂光司校長・東京都千代田区)は今年度、同校のICT環境を一新し、2種類のタブレットPC計250台を整備した。PC教室はアクティブ・ラーニング教室とし13インチのタブレットを41台導入、新しい学びの場を提供している。LL教室にも同様に13インチのタブレットを41台、普通教室用として10インチのタブレット端末を168台導入。2種類の端末整備について、同校の教務主任であり技術・家庭科(技術分野)・情報科を担当する田崎丈晴主幹教諭に、その目的と選定ポイントについて聞いた。

同校では「総合的な学習の時間」で、様々な体験を通して課題発見・解決能力やコミュニケーション能力、情報活用能力などを養う「九段自立プラン」を設定しており、環境や国際理解等学年ごとにテーマを決めて課題解決学習を行っている。
情報収集のスキルや表現スキルなどの育成も盛り込み、発表活動も行うことから、かねてよりPCを活用する機会が多く、1人1台端末を活用したいなどの要望があり、整備に至ったという。

田崎主幹教諭は本整備について、「授業を計画する上で情報環境があるという前提が確立されるためには、これまでとは異なる整備が必要であると考えた。将来的には完全に1人1台環境が実現するかもしれないが、現在は過渡期。過渡期としてのベターな環境を検討し、PCの性能をもったタブレットを導入することにした。教員の立場で新しい学習環境の在り方を提案できたのは貴重な経験」と話す。

千代田区立九段中等教育学校
PC室とLL室に13インチ、普通教室用に
10インチのタブレットPCを配備
千代田区立九段中等教育学校
タブレットPCは40台を1セットで保管・充電

同校のアクティブ・ラーニング教室にはプロジェクターが4台あり、そのうち1台が87インチサイズの電子黒板だ。勾玉型のデスクの上は広々としており、PCが見当たらない。13インチのペンタブレット(ワコム)41台は、教室隅の充電保管庫に格納されており、出番を待っている。PCを使わない学習の際は広々としたスペースを使って、互いの顔を見ながら協働的な活動に取り組みたい、ということから、固定設置をやめた。

キーボードとスタイラスペンも同時に整備。

「デスクが広いので、13インチにキーボードを設置しても活動するスペースを確保できる」という。LL教室も、個別に英語学習を進めることができるよう、同様の整備を行った。

持ち運びもできるが、これらの端末は、普通教室との共有を想定しているわけではない。

普通教室用には、「普通教室の生徒用デスクに置いても邪魔にならない大きさ」を基準に、10・6インチのSurfacePro2(マイクロソフト)168台を保管庫4台に格納して2棟から構成される校舎の双方に2台ずつ配備しており、主に教科の特別教室や講義室、ホームルームクラスなどで活用されている。生徒用40台、教員用2台として、4クラスが同時に活用できる環境だ。

SurfacePro2選択の理由は、ペンの性能、持ち運びのしやすさ、PCとしての活用とタブレットとしての活用がスムーズでストレスなく使える点など。

「キーボードとマウスのみではなく、紙とペンに近い感覚をもつ端末のほうが、教員の活用が進むと考えた。教員の活用が進むと、生徒に活用させることにも積極的になりやすい」と話す。

PC40台を1台で保管

充電保管庫は「13インチのPCが40台格納できる」ものを探し、その結果「TPR‐AC45LS」(アクティブ)が導入された。縦置きの省スペースタイプで45台まで保管でき、充電を数台ごとに順番に行うことができる充電装置を装備。普通教室用の10インチタイプも同様の充電保管庫で、40数台がコンパクトに廊下に収まった。以前は1台のワゴンにPCが10台しか入らないという環境であったが、40台のPCが1台のワゴンに格納できるようになったので、移動もしやすくなったようだ。

APは67台設置

今年度のICT環境整備を想定して、無線LANは昨年度に導入済。

全6学年が2つの校舎棟に分かれており、ICT支援員もいないことから、選定基準は管理・運営面の簡便さとし、複数台の無線LANアクセスポイント(AP)を管理できるコントローラ型を選択した。

無線LANは周囲の環境や校舎の形など様々な要素に左右されることから、候補に挙がったAP2機種において、校舎内の電波の状況を検証して導入を決めた。APは、PC室には2台、普通教室や視聴覚室、音楽室、美術室、工芸室、家庭科室、武道場には各1台、体育館には1台、2つの校舎棟で計67台設置されている。

美術では動画も制作

整備して約5か月。アクティブ・ラーニング教室は情報科でフル稼働している。田崎主幹教諭の「情報」の授業では、主にデジタルノートアプリケーション「Microsoft OneNote」の活用が多いようだ。

各教科でもICTを活用した授業に取り組みやすくなった。ホームルームクラスや特別教室の多くにはすべてプロジェクターが整備済みで、教員による一斉提示のための活用は既に行われている。

現在は、個人PCの導入によって、調べ学習や発表活動、グループでの学習活動に取り組む。美術では動画制作なども可能になった。

田崎主幹教諭は「生徒にどのような力を身に付けさせたいのかという意識で授業を見直す教員から活用が進んでいるように感じる。一斉提示においても、考えるプロセスを積み重ねる仕掛けづくりが、学力の伸長につながる」と話す。生徒会活動や文芸部などを始めとした生徒の自発的な活用も進んでいる。

【2014年10月6日】

関連記事

↑pagetop