世界が拡がる“学びの場”に―つくば市立春日学園

新単元“考える時間”も設置

9月16〜18日、開校3年目となる施設一体型小中一貫教育校・つくば市立春日学園(片岡浄校長・茨城県)でプレゼンテーションコンテストが行われた。このコンテストは全学年を対象としたもので、3日間で前期ブロック(1〜4学年)、中期ブロック(5〜7学年)、後期ブロック(8、9年生)のコンテストを開催。各ブロックの予選を経て選ばれた2つのグループが競い、金賞を受賞したグループは11月に行われるつくば市プレゼンテーションコンテストに参加する。これはつくば市内の全小中学校が参加して行われるもので、本年で12回目の開催。

つくば市立春日学園
環境問題をオリジナルの思考ツールで
プレゼンする7年生
つくば市立春日学園
調べ学習の中で生まれた疑問を表現(9年生)
つくば市立春日学園
9年生が1年生にPCを教える様子を
英語でプレゼン

つくば市では、平成24年度から文部科学省に認可された新しい教育課程「つくばスタイル科」を設置。総合的な学習の時間を踏まえつつ21世紀を見据えた「つくば次世代型スキル」の育成を目標としたもので、発信型プロジェクト学習と外国語活動(1〜6学年対象)で構成されており、市全体でICTを活用した発信型学習の取り組みが加速した。

春日学園では、「つくばスタイル科」をさらに充実させるために、「つくば次世代型スキル」の「学びの3つのステップ」=「In(課題を見付ける)・About(情報を集める)・For(何ができるか考え、発信する)」の習得を目指して、平成25年度に新単元「考える時間」を設置。1年生から6年生が月1回、ICTを活用しながら、比較・分類・関連付けなどの8種の思考スキルを12種類の思考ツールで学習している。

同学園ではこのほか、9年生から1年生へのタブレット端末や電子黒板を使ったプレゼン指導、タブレット端末を使った校外での取材活動、全校生徒の前で行う英語フォーラムなどにも取り組む。中でもプレゼンテーションコンテストは日頃の学習の成果を発表する集大成の場だ。

取材体験をもとに自分の言葉で提言

9月18日に行われた8、9年生の発表は「わたしたちの生活と人工衛星の関わり」、「つくばのまち再発見!さまざまな環境から人々を守るつくば建築試験研究センター」、「核兵器のない平和な世界へ」、「平和─平和記念公園見学の経験を通して‐」の4つ。すべての班が原稿を見ることなくしっかりと前を向いて、電子黒板に工夫を凝らした画像や動画を映し出し、プレゼンテーションを行った。8年生は施設見学、9年生は広島への修学旅行の取材がもとになっている。

9年生の女子生徒4名で構成されるグループ「世界平和委員会」は、核保有国の地図と子供達の笑顔の間に「核と笑顔??」と書かれた画像を提示。調べ学習の中で生まれた疑問を表現した。高熱で溶けた生活用品など原爆の被害を映し出し、「今まで社会科などで平和について学習してきたが、机上の学習だった」と実感を伝え、非核三原則を世界に広めようと提言。学校という場で子供達が平和を発信していくことが核廃絶につながると訴えた。

9年生の男子生徒4名は、平和活動家に取材して感じた平和のありがたさや命の尊さを、原爆の子の像に重ねた文字で表現。手作りの剣を放り投げるというパフォーマンスを交えながら「春日平和三原則」と名付けた平和のための提言を行い、ボランティア活動やいじめをしないさせない心、相手を思いやる気持ちが人と人とのつながりをつくり、戦争のない世の中につながると訴えた。観客となった8、9年生の生徒達はクラス・学年の予選を経て成長した仲間の姿に真剣に見入っていた。

講評の野村教諭は、すべての班に対して「学習の目的をしっかり持ち、目的達成のために必要な材料を集め、わかりやすいように内容を加工して練習し、ジェスチャーやパフォーマンスを交えて発表していた」と評価。特に内容が重要であると述べ、自分達の言葉で提言を行った9年生を称えた。

9年間で伸びるスキル・内容・思い

施設一体型小中一貫教育を行う春日学園では、プレゼンテーションについても9年間の連続した学びを行っている。

1年生のテーマは「学校の好きな場所」。原稿を見ずに前を向き、大きな声ではきはきとプレゼンテーションを行う。4年生は「エコ生活」をテーマに、手作りのアイディアグッズを披露。テンポよく声を合わせるなど、プレゼンテーション能力を高めている。

7年生は、「考える時間」に学習した思考ツールを応用してトリプルのベン図で環境問題をわかりやすく説明するなど、日々の積み重ねをプレゼンテーションに活かしている。どの活動も、生徒同士の学び合いや主体的な取り組みによるものだという。

英語のプレゼンテーションを得意とする9年生の男子生徒、女子生徒に「春日学園の良さ」を尋ねたところ、「小さい子から9年生までいろんな人がいて、いろんな発想があると実感できる」と答えてくれた。

毛利教頭が「ICT活用は社会や明日につながっていくもの」と語るように、春日学園では「つくばスタイル科」のプレゼンテーション学習を通して協働学習の場づくりが進んでいることがわかる。その担い手である教員同士もまた、協働で学んでおり、子供達の成長を支えている。

世界を広げて意欲を引き出す―片岡浄校長

つくば市ではプレゼンテーションコンテストのほかにも、子供達が議員を前にプレゼンテーションを行う「子ども議会」も設けています。パブリックな場に出るゴールを作ることで、子供達は真剣に調べ、借り物ではない言葉で表現しようとします。世界が広がると学習意欲が引き出され、自分の可能性がわかり、個性が伸びてくるのではないでしょうか。

【2014年10月6日】

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