学校法人河合塾は、サマースクール「Dalton Children's University Summer 2014」を8月5〜9日に東京都内で開催した。本サマースクールは、ニューヨークのThe Dalton School創設者ヘレン・パーカースト女史が掲げる教育理念「自由と協働」を根幹とするドルトン・プランに基づく学習方法を採用しており、これからの学習の在り方の一つとして広く提案する。対象は小4〜6生。
ロボットをプログラミングして劇作り |
事前学習でスクラッチやラズベリーパイ学ぶ |
本合宿では、個々の生徒が学びに必要な時間を十分にとり、それぞれの学び方を深めていく「自由」と、生徒がお互いに学び合い、高め合っていく「協働」の理念を4泊5日の宿泊学習で実践することが目的。
1日目は数学とデザインをテーマに工房「Makers' Base」(東京都目黒区)で、2日目は文学と文化をテーマとして深川江戸資料館で、3日目以降はドルトンスクール東京校において、実験科学とコンピュータ・サイエンスや英語をテーマに取り組み、最終日は発表活動を行った。
合宿では事前事後それぞれ1か月間程度を費やして、インターネットを用いたアサインメントを行った。参加する児童は、貸与されたiPadを利用し、各家庭で個別に学ぶ。iPadを選択した理由について、ワークショップを担当した荒木貴之講師は「遠隔で個別学習をすることから、利用者が戸惑わない機種を選ぶ必要があった。iPadは教育用アプリが豊富で使いやすい」と話す。事前学習中にテクニカルな問い合わせはなかったようだ。
個別学習は、Learning Management System(学習管理システム、以後LMS)を活用。LMSとは、小テストやワークシートなどを始めとした教材の配信と、児童生徒の成績・学習進の双方を管理できる仕組み。今回はそのLMSに「schoology」という米国のソリューションを採用。「schoology」は、利用端末を選ばずに活用でき、英語を含めた多言語表示に対応。教師陣には外国人もいることから、複数言語に対応している点も重要だ。容量制限がないので、サマースクール期間中、日に400枚もの写真をLMSにアップロード、保護者は自由に閲覧できた。
3日目のコンピュータ・サイエンスの授業は、ロボット劇作成に向けたディスカッションとプログラミングだ。PEG(=Programming Education Gathering)の一環でGoogleから寄贈されたPC「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」を使い、小池星多准教授(東京都市大学)が開発したソーシャルロボット「MUGBOT」を、杉浦学氏(山梨英和大学)がロボット用にカスタマイズしたプログラミング言語「Scratch」でプログラミング、チームで話し合いをしながら劇を作る。しかも、日本語しか話せないロボットと英語しか話せないロボットと両方を話せるロボット3体を使う。プログラミングそのものを教えている様子はないにも係わらず、サポート役のチューターの支援を受けながら、すべてのチームが2時間ほどで1分程の劇を完成させ、関係者を驚かせた。
事前課題では、「Scratch」の操作説明の視聴や体験キットを用いた自習も行っている。荒木講師は、「プログラミングを始めとして、本サマースクールにおいて必要となるスキルは、事前学習で十分に身についていた。自由を尊重した学習だからこそ、児童は想定されていた目標をはるかに超えた成果を達成した」と語った。
村上義則顧問(河合塾)は、「本来学びとは強制されて行うものではなく、楽しいもの。語学やプログラミングなども、スキルとしてではなく、自ら学ぶ楽しさや学ぶ喜びの実感を得るための体験として提供している」と語る。河合塾は、今後も定期的に、ドルトン・プランを始めとする新しい学びのスタイルを広く紹介していく考えだ。
文部科学省は海外のプログラミング教育に関する調査事業を行う。調査結果は、次期学習指導要領に反映される可能性がある。
調査は、アメリカ合衆国、アルゼンチン、イスラエル、イタリア、イングランド、インド、インドネシアなどの21か国を対象に実施。
調査対象は、プログラミングに関する教育課程上の位置付けや教育目標、指導内容、プログラミング言語、プログラム作成の目的及び課題、指導者の有無や資格の有無、教材と教材費の負担者、評価方法、導入時期、大学入試や高校入試及び就職試験における取り扱いや評価、大学、NPO法人等との連携、教員養成、研修制度や指導者の確保方法など。
また、特徴的なプログラミングに関する教育を行っている5か国を選び、使用教科書の該当部分を日本語訳もする。
調査報告は年度末にまとめられる予定。
名刺サイズのPC「ラズベリーパイ」 は拡張性と手頃な価格が魅力 |
名刺サイズのPC「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」を使ったプログラミング学習の試みが急速に広がっている。これはGoogleの教育プロジェクトPEG(programming education gathering)に多くの学校が参加したためだ。5000台のラズベリーパイを使いプログラミングの楽しさを広げる試みで、今年2月にスタートした。
東京都品川区立京陽小学校では、全児童にラズベリーパイを配布。国語で「同音異義語クイズ」を作ったり、理科の実験で、児童の予測をアニメーションにして、実験結果と比較したりといった授業が行われている。
現在、PEGの事務局には、ラズベリーパイを活用した授業実践の報告が集まっており、まもなくPEGのHPで公開される予定だ。
ラズベリーパイは3940円と安価で拡張性に優れていること、電子回路に接続して制御できることが大きな特徴。従来のプログラミングでは、ディスプレイ上で物を動かすものが多かったが、ラズベリーパイは、自分が書いたプログラムで実物を動かす「ものづくり」の楽しさを体験できる。
カメラや赤外線カメラ、温度センサーなどの拡張モジュールも豊富。カメラをつないで植物の成長過程を撮影する、温度センサーをつないで気温の変化を自動的に記録する、自分で作った電子回路に接続してLEDを点滅させる、などが簡単にできる。アールエスコンポーネンツは正規代理店として、ラズベリーパイを取り扱っている。
▼詳細=http://jp.rs-online.com/web/
【2014年9月1日】
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