教育委員会対象セミナー・東京 ICT機器の整備計画/校務の情報化

全校に個人端末整備 段階的に取り組む―荒川区教育委員会 駒崎彰一氏

3本柱でグローバル人材育む

教育委員会対象セミナー
荒川区教育委員会
駒崎彰一氏

教員683人、小学校24校・児童8309人、中学校10校・生徒3303人規模の荒川区。今年度予算932億円のうち教育費はその8・2%を計上し、3本柱「学校パワーアップ事業」「学校図書館事業」「教育の情報化事業」でグローバル人材育成に取り組んでいる。

「学校パワーアップ事業」では、校長の予算裁量権を拡大。学力向上で1校80万円/年、特色ある教育活動で1校100万円/年を予算化した。

「教育の情報化事業」では電子黒板や書画カメラを小中学校全普通教室に導入。指導者用デジタル教科書はネットワーク配信で4年間のリース契約により、各校年間30万円程度で導入。平成25年度からは、タブレットPCモデル事業をスタート。全国から注目を浴びている。

モデル校で成果検証

初年度はモデル校4校(小学校3、中学校1)に1200台のタブレットPCを導入。総務省フューチャースクール推進事業・文科省学びのイノベーション事業(以下、FS事業)における成果を踏襲・改善してシステムを構築した。

FS事業からの改善点は、タブレットPCを全校に解き放ったこと。教室、廊下、体育館、プールなど、校内のどこででも使うことができるようにした。ネットワーク上でグルーピングされており、協働的な活動にも対応できる。ICT支援員については、「SE系」「授業支援系」両タイプを準備。1年間は各校に常駐、その後は巡回とする予定だ。

導入校では早々に様々な活用が進み、個人学習や協働学習において「自由な発想で様々な活用が生まれた」という。理科などの実験や体育、家庭科、図工など実技教科での活用度は特に高い。これら成果を「学校に勢いが出てきた」と駒崎氏は表現する。授業づくりに対する教員の意識を高めるきっかけになり、授業の質も向上。教員間のコミュニケーションが活発になり、学校視察にも積極的になっていった。

導入効果を上げる条件

モデル校での検証により、導入効果が上がる場合の「条件」も明らかになった。日常的な「授業規律」の確立、授業力向上に向けた教員の姿勢、情報モラル教育、無線LANの安定稼動などだ。

「無線LANの安定稼動はかなり重要なポイント。調整を重ね、FS事業時と比較すると安定した1人1台活用が可能になった」という。区では予備機も1クラスにつき2台導入している。

しかしシステムトラブルはゼロにはならないもの。そこで必要になるのが、総合的な「対応力」だ。授業中、タブレット端末が突然動かなくなっても、それ以外の方法で授業を進めることができる教員の対応力。これについては教員研修で取り組む。

バックアップ体制として、ヘルプデスクやリモートアクセスなどの仕組みも整えた。

情報モラル教育については、理論と実践両面から、リテラシーとコミュニケーション力の育成に向けて取り組む。小学校では、ゲーム形式で「情報モラル」について学習できるコンテンツを導入、仮想環境で体験学習を行った。中学校では、教員研修や生徒への啓発活動を進めながら、タブレットPCの活用にあわせた具体的な指導を進めた。

全校導入に着手

モデル校の成果を受け、今年度から全校に1人1台体制を構築。30校(小学校21校・中学校9校)に8300台のタブレットPC整備に取り組む。整備内容は、小学校1〜2年生4クラスにつき1セット(※)、3〜6年生2クラスにつき1セット、中学校1人1台のタブレットPCだ(※1セット=タブレット端末40台)。落としても水没しても故障しないキーボード付きのタブレットPCで、9月には運用を開始、実機での研修を進める。

最初の段階は、ICT支援員の助けを借りつつ、とにかく触れて慣れること。

次に取り組むのが、日常的に活用する段階。授業技術の向上や意識改革を目的に、各校で研修を行う。駒崎氏はこれまでの経験から「日常的な活用までは、すぐにたどりつくことができる」と述べる。

次に目指すのが「効果的な活用」だ。そのために必要な仕組みとして、活用アイデアや指導案、自作教材を共有できる専用のポータルサイトを構築。全校的な情報共有を図る。

これら段階を経、協調型問題解決学習を実現して21世紀型スキルの育成を目指す。区では、産学官連携で教員研修を開発。丸2日間における研修を今夏に実施予定だ。さらに今後は、校務でもタブレットPCを活用していく計画で、ネットワークを切り分けた運用を予定している。(講師=荒川区教育委員会事務局指導室統括指導主事 駒崎彰一氏/同指導主事 菅原千保子氏)

【教育委員会対象セミナー・東京:2014年7月2日】

【2014年8月4日】

関連記事

↑pagetop