学校インターネットとデータマイニング 仕組みを知り適切な契約を

 安全で信頼できるクラウドコンピューティングを推進する非営利団体SafeGov.org(本部=米国ワシントン州、ジェフ・グールド代表、以下セーフガブ)は3月18日、日本国内の小中高校生の保護者を対象に行った、教室内におけるインターネット利用に対する意識調査の結果を発表した。それによると、学校内で子供がインターネットを利用する際、その閲覧傾向やパーソナルデータなどを企業が「データマイニング」を行い利用することに対して、74%の保護者が反対している。

セーフ・ガブ
セーフ・ガブ代表
ジエフ・グールド氏

 調査によると、46%の保護者は学校内でのインターネット利用により、就職に必要なスキルが身につくと考えているが、大多数はデータマイニング関連の行為に否定的だ。とりわけ子供の個人情報の追跡・分析には強い抵抗を示している。

  「データマイニング」とは、あらゆるインターネット利用の履歴により企業に蓄積する大量のデータを解析してその傾向を分析する技術のこと。どのようなサイト・動画を閲覧しているのか、どのようなメールが送受信されており、ユーザが反応するキーワードは何か、年代や性別、主な活動範囲はどこか、そして今何を考えているのか‐‐その「分析される範囲」は、日々高度化、細分化、拡大されている。

  セーフガブ代表のジェフ・グールド氏は、「米国では、企業が提供する無料の電子メールアカウントの導入が進んでいる。データマイニングの脅威が浸透する以前に多くの学校が導入をすませているため、各校の契約体系でデータマイニングの禁止に触れるものはほとんどなく、十分な契約であるとはいえない」と指摘する。米国に少し遅れて学校導入を進めたEUでは、「取得した個人情報は、契約によって提供されるサービスに必要なときにのみ使用する」と明示されており、取得した個人情報の使用目的を制限しているという。

  「世の中に存在するあらゆるアプリが裏でどのような動きをしているのか、誰も把握しきれていない。かつてGoogleは、ユーザが『開示したメール』をデータマイニングの対象としていたが、いまや、開封・未開封係わらず届いたメール『すべて』を解析しており、その追跡力は高度化される一方。しかもGoogleと米国の学校間での契約において、『学校向けに広告を表示しない』ことは明示しているものの、ほとんどの場合『Googleの提供するサービスを活用することでGoogleが子供について得た情報を広告活動に活用しない』という点には触れていない」と指摘する。

  データマイニングそのものは、社会や経済、ビジネスに対して大きな影響を与えるパワフルなテクノロジーだ。しかし制限をかけるべき領域もあり、学校もそのひとつといえる。

  この危険を回避するためにはどうすればよいのか。

  グールド氏は、「まずは保護者や教員が、そこに潜む具体的な危険性について認知すること。たとえば、低価格の端末で、Googleアカウントが必須のものがある。これは、所有と同時にGoogleに自分の情報を提供している可能性が高い。今後日本は、米国、EU双方の状況を見て、よりよい方法を確立するべきである。日本政府、保護者、教育関係者は『データマイニング』の脅威を知り、このタイミングで十分に議論を深めることで、アメリカが引き起こしたミスを回避することができる」と述べた。

  調査からは、80%以上の保護者は、学校は企業に対し明確な個人情報の保護方針を求めるべきだと考えており、61%の保護者が、データマイニングに関するオプトアウトポリシーを設定することで、学校内でのインターネット利用を容認できると考えている。

  セーフガブでは、教育現場におけるクラウド利用と個人情報に係る問題の啓発に関わる情報提供のためのWebサイトを開設。保護者・教員・政策立案者向けにメッセージを発信している。
■URL=http://edu.safegov.org/

【2014年4月7日】

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