デジタル教科書標準化

 指導者用デジタル教科書は、これまでの授業スタイルを強化・支援するツールとしてその成果が浸透しており、各自治体において導入が一般化してきている。特に電子黒板等提示機器とともに整備が行われることで、その活用は早期に浸透していく。学力向上についても一定の成果が見られ、現状小学校で約37%が何らかの形で指導者用デジタル教科書を導入している。

  では、学習者用デジタル教科書についてはどうか。

  文部科学省では「学びのイノベーション事業」でデジタル教科書を提供。単元限定の提供で、活用法と可能性が検証された。

  さらに今年度より3年間で「デジタル教科書の標準仕様」に取り組んでおり、平成27年度末には何らかの標準仕様がまとめられる。現状はEPUB3を想定して進んでいる。

  なお総務省では、教育クラウドのプラットフォーム開発に取り組んでいる。こちらはHTML5を想定している。文科省担当に聞くと「HTML5とEPUB3は対立するものではない」、「HTML5を想定した教育クラウド上で、EPUB3ファイルをダウンロードして閲覧することは可能」ということだ。

  さらに、教科書会社各社でも学習者用デジタル教科書の標準化に対する要望に応えるべく、プラットフォーム作りや教科書ビューワの操作性統一に向けた動きが始まっている。以下まとめ。

  教科書会社12社(※)が連携してスタートしたコンソーシアム「CoNETS」。EPUB3をベースに基本的な操作性を統一する。同じ配信プラットフォームを活用することで、CoNETSのビューワを活用した教科書ならば、各教科連携も実現する。現在、立命館小学校などと連携して、学習者用デジタル教科書・教材などを作成・検証中。専用ビューワと配信システムの開発は日立ソリューションズ。
(※)大日本図書、光村図書、数研出版、啓林館、実教出版、開隆堂、三省堂、教育芸術社、帝国書院、山川出版、大修館書店、日本文教出版

  前記12社以外では、東京書籍が、ACCESS社のビューワ「PUBLUS(R)Reader for Education」を採用したと発表。今春には本ビューワを用いた特別支援向けデジタル教材の見本を各自治体などに向けて配布予定。専門家のアドバイスも受けながら全国の特別支援学校と実証研究も行う。さらに本ビューワは、学習者用デジタル教科書のプラットフォームとしての開発も視野に入れた検証が進められる。

  電子書籍サービスを広く提供している大日本印刷(DNP)は教育出版と連携してデジタル教科書・教材の配信やタブレット端末での閲覧・操作に必要なビューワ、次の時間の授業や自習に活用できる学習履歴の保存機能などを持つデジタル教科書・教材システムを開発。3月末まで、古河市立古河第五小学校(茨城県)の5年生・社会科で実証研究中。

  2014年4月から教科書出版社向けに、今回の実証研究で改良したデジタル教科書・教材システムを提供していくとしている。

  学研教育みらい・学研教育出版と学校図書は、デジタル教科書プラットフォームの共同開発で連携をスタート。小中連携、教科横断、特別支援等に力を入れ、学研グループのもつ多様なコンテンツ・素材を、調べ学習を始めとする学びに役立つ資料として活かす。プラットフォームの開発は学研教育出版が担当。デジタル教科書の標準化にも柔軟に対応するとしている。2015年2月完成を目指す。

  学習者用デジタル教科書において、現状で複数プラットフォーム、ビューワ開発が進んでいる。

  まずは5月に開催される「第5回教育ITソリューションエキスポ」(EDIX)(5月21〜23日)において、その片鱗を見ることができそうだ。CoNETS、学研、DNP、凸版印刷(東京書籍協力)はそれぞれEDIXでブース出展が決定しており、「学習者用デジタル教科書」モデルの公表も予定している。

【2014年3月3日】

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