1月16日、タブレット端末や電子黒板等のICTを活用した授業の研究発表会が熊本県・高森町立高森中学校を会場に開催された。高森町の全4小中学校(高森中学校、高森東中、高森中央小学校、高森東小学校)は、熊本県教育委員会指定の「ICTを活用した『未来の学校』創造プロジェクト推進事業」の研究推進校に指定されている。当日は全国各地から約500人を越える教職員が参加した。
テレビ会議で専門的なアドバイスを受ける(社会) |
音を収集、オシロスコープで視覚化、特徴を分類する(理科) |
面積を変えずに形を変える方法をタブレット上で考える(数学) |
様々な資料を提示して“思考”の素地固め(道徳) |
杉聖也教諭(高森東小学校)と河内航教諭(高森中央小学校)は小学6年・社会「わたしたちの生活と政治」において、役場と消防署を相手に2か所同時に行われたテレビ会議を実施。北部豪雨災害からの復旧活動について児童が調べたことに対して、担当者から専門的なアドバイスを受けた。授業の後半では、タブレットで県庁・自衛隊・日赤の担当者へのインタビュー動画を閲覧。災害復旧における行政の働きを整理した。
有働ほずみ教諭(高森東中学校)は中学1年・理科「身のまわりの現象」で、弦楽器や打楽器の音をタブレットの録音機能で収集し、オシロスコープソフトで視覚化する実験を行った。実験後は、タブレットの波形図に電子ペンで書き込みをして音の特徴を分析。最後に各班のタブレットから実験結果画面を電子黒板に転送して共有し、音の高低によって波形に違いがあることを確認した。
野村優資教諭(高森中学校)は中学2年・数学「平行線と面積」で、タブレットのワープロソフトを活用して、面積を変えずに四角形を三角形に変形する方法を考えた。1人1台のタブレットで考える時間を十分に確保することができる。全体で考えを共有する場面では画面転送システムを使い、学び合いを通して技能を習得させた。
野添敏幸教諭(高森中学校)は中学3年・道徳「三日間 命の輝き」で、生後3日でこの世を去った我が子への思いをまとめた手記やビデオを教材として、かけがえのない命について考えさせる授業を展開。導入で電子黒板を使って、これまで生きてきた日数や赤ちゃんの写真等を提示、教材の世界に浸る。授業の終わりでは両親が作成したメッセージ映像を視聴。命の価値を再認識させる授業内容を展開した。
デジタルポスターセッションでは、8名の教員が電子黒板を使って各学校の日常的な取り組みについて報告した。
小学校低学年では生活習慣と学習規律の確立を目的として、朝の会の合唱指導で、電子黒板に歌詞を提示してイメージをふくらませながら歌う。給食指導ではタイマーの拡大提示による意欲付けなどをしている。
中学校音楽科では作曲ソフトで曲づくりを行っている。互いに作品を披露して良さも共有。歌詞や歌のイメージをつかませる上で画像や動画の活用が効果的であることから、自作のデジタルコンテンツの活用頻度も多い。
武道「柔道」では、指導と評価の一体化についてワークシートとデジタルコンテンツの関連を図っている。器械運動「跳び箱」では、1人1台のタブレット端末で自分の動きの動画記録を見て分析している。
同地区の取り組みについて、放送大学の中川一史教授と金沢星稜大学の佐藤幸江教授は「町長、教育長、学校、地域が一体となって進めており、成果はICT活用にとどまるものではなく、コミュニケーション力育成や地域を愛する児童生徒の育成にもつながっている好事例」と評価した。
【2014年2月3日】
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